「やさしい風を感じた瞬間(とき)」
「どうしてここで立ち止まったのだろう」・「どうしてここで振り返ったのだろう」・「どうして僕はここにレンズを向けているのだろう」・・・たくさんの作品を前にして考える時があります。その一枚一枚に色々な要因や理由があり、そのひとつに「風」があります。
「風」は色んなものを運んでくれます。においだったり、温度だったり、音だったり、それこそ光のきらめきだったり。視覚を含む全ての感覚に働きかけ物や現象の存在を運んでくれます。「やさしい風」に導かれた光景は、音はあるのですが、写真になった時は静寂でとても落ち着きます。何よりもそんな日は光までもやさしくて、とても豊かな階調の写真に仕上がり、そんな感覚が僕は好きなのです。
僕には「熟成」という長期テーマがあります。それは1年や2年ではなく、10年単位のテーマです。撮った中にはすぐに面白くない写真がたくさんあります。しかし、フィルムボックスの中でジワジワ良くなっていくモノがまれにあるのです。今回は10年以上前に撮影したモノも多数あります。やっと「熟成」してくれた写真達です。
さらに、壁にかけていつまでも見ておきたい作品を選びました。僕の作品は強いインパクトのあるモノではありません。いつの間にか空間に溶け込んでその場所の一部になるようなモノで、外した時に少し寂しく物足りなくなる気がします。そこでもどんどん「熟成」していく感じです。
文末になりましたが、今回この企画をしてくれたクリックファームの松浦さん、本当にありがとうございました。2006.3