「C型慢性肝炎に対するインターフェロン療法の有用性について」
           
杏林大学医学部・第3内科 高 須 政 夫


       1997年杏林大学生涯教育講座の時に配布したテキスト

はじめに
 C型慢性活動性肝炎の治療法としてのインターフェロン療法が1992年に健康保険適応になって以来5年が経過し,一般診療でも広く使用されるようになった.しかし,治療により肝機能が正常化しウイルスを排除するに至る例は全体の30〜40%にすぎないことが明らかとなり,治療効果が得られやすい条件について検討されている.今回は,インターフェロンの有用性とその適応の判断について紹介する.

C型慢性肝炎の診断について   診断の手順

慢性肝炎の診断基準 (1996年 犬山シンポジウム)
 慢性肝炎とは臨床的には6カ月以上の肝機能検査値の異常とウイルス感染が持続している病態をいう.組織学的には門脈域にリンパ球を主体とした細胞浸潤と線維化を認め,肝実質内には種々の程度の肝細胞の変性・壊死所見を認める.そして,その組織所見は線維化と壊死・炎症所見を反映させ,各々線維化 (staging)と活動性 (grading)の各段階に分け表記する.
【staging】
 線維化の程度は門脈域より線維化が進展し小葉が改築され肝硬変へ進展する段階を線維化なし (F0),門脈域の線維性拡大 (F1),bridingfibrosis (F2),小葉のひずみを伴うbridging fibrosis (F3)までの4段階に区分する.さらに結節形成傾向が全体に認められる場合は肝硬変 (F4)と分類する.
【grading】
 壊死・炎症所見はその程度により活動性なし (A0),軽度活動性 (A1),中等度活動性 (A2),高度活動性 (A3)の4段階に区分する.すなわち,活動性の評価はpiecemeal necrosis,小葉内の細胞浸潤と肝細胞の変性ならびに壊死(spotty necrosis, bridging necrosisなど)で行う.
【付記】
F0:線維化なし            A0:壊死・炎症所見なし
F1:門脈域の線維性拡大        A1:軽度の壊死・炎症所見
F2:線維性架橋形成          A2:中等度の壊死・炎症所見
F3:小葉のひずみを伴う線維性架橋形成 A3:高度の壊死・炎症所見
F4:肝硬変


インターフェロンの適応の判定

肝硬変にはインターフェロンは投与できないので慢性肝炎であることを診断する

 C型慢性肝炎の進展度の診断

1.肝組織学的検査(肝生検,腹腔鏡検査を含む)
確定診断は組織学的な診断が必要
2.画像検査(超音波検査,CTなど)
肝臓の大きさや辺縁・表面の性状から判断.
肝硬変:肝の萎縮と表面の不整や脾腫
3.血小板
10万を切ったら肝硬変の可能性が大
4.肝線維化マーカー
肝硬変の目安:ヒアルロン酸:130ng/ml 以上
「型コラーゲン7S:7.0ng/ml 以上
5.GOT/GPT
肝硬変になるとGOT優位になる場合が多い
6.その他
コリンエステラーゼ活性
プロトロンビン時間・ヘパプラスチンテスト
アルブミン値・コレステロール値

インターフェロンの種類


インターフェロンの投与法

一般的な投与方法
IFN-αの場合
一日600〜1000万単位を初期2〜4週間連日投与し,
          その後,3回/週間欠投与し合計で24週間投与する.
IFN-βの場合
一日300〜600万単位を8週間連日投与する.

投与法の工夫
IFN-α
治療抵抗性のセログループ 1 や高ウイルス量の場合には,一日600〜1000万単位を初期4〜8週間連日投与期間を延長し,その後3回/週 間欠投与し合計で24週間投与する.
治療効果が得られやすいセログループ 2 や低ウイルス量の場合は,より短期間の投与方法も検討されている.
IFN-β+α
IFN-βを初期300万単位を朝・夕の2回2〜4週間連日静注投与し,その後,IFN-αを3回/週・間欠筋注投与を合計で24週間投与する.

インターフェロンの効果判定(厚生省難治性の肝炎治療研究班判定基準)

著効:投与終了後 6ヶ月以内にGPTが正常化し,その後6ヶ月間以上 正常値が持続した例.
有効:投与終了後,6ヶ月以内にGPTが正常上限の2倍以下に改善し,その後6ヶ月間以上,正常上限値の2倍以下を持続した例.
悪化:投与終了後,6ヶ月間の経過で投与善に比して,GPTが明らかに増悪した例.
不変:上記に属さない例

当科におけるインターフェロンの効果判定

完全著効   投与終了後6ヶ月後のGPTが正常で,HCV-RNAが陰性
不完全著効  投与終了後6ヶ月後のGPTが正常で,HCV-RNAが陽性
無効     投与終了後6ヶ月後のGPTが以上で,HCV-RNAが陽性

インターフェロンの治療効果

インターフェロンの効果別の肝線維化マーカーの値
        ヒアルロン酸(HA)と「型コラーゲン7S(7S)

     全 体             HCV-RNAセログループ 1
                      (Genotype 1a(), 1b())


インターフェロンによりウイルスを排除しやすい条件

1.血中のHCV-RNA量が少ない.
たとえば, HCV-RNAプローブ法で0.5Meq/ml以下
アンプリコアモニター法で50Kcopy/ml以下
CRT-PCR法で105copy/ml以下
MRT-PCR法で107copy/ml以下

2.HCVの遺伝子型がセログループ2(Genotype 2a(。), 2b(「))である.

3.組織学的に進展度が軽症である.
肝生検の結果,線維化が軽度である.
ヒアルロン酸では140ng/ml以下
「型コラーゲン7Sでは7.0ng/ml以下

4.その他
HCVの変異など

インターフェロンの副作用

1.投与初期の症状
@インフルエンザ様症状(発熱・頭痛・筋肉痛・関節痛・倦怠感)
A蛋白尿
B白血球減少・血小板減少

2.投与中の症状
早期から
 @消化器症状(悪心・嘔吐・下痢・食欲不振)
 A皮疹
 B精神神経症状(うつ状態・情緒不安・不眠・うつ病)
 C循環器症状(不整脈・胸部痛・動悸 )
後期
 @脱毛
 A甲状腺機能異常(甲状腺機能低下症・亢進症)
 B間質性肺炎
 C眼底の変化(軟性白斑・眼底出血)
 D抗インターフェロン抗体の出現