釣り雑誌等に掲載したものに加筆して、再録しました。



No.5 2004/08/08


絵のある旅-1
ふるさとの川 釣行記(上) 奥入瀬渓流・焼山<やけやま>
高見政良


 山や海の「風景画」は描く気がしない。よく「こんなところを…
…」と言われるが、部屋の本棚や壁、ポスター、窓にぶら下がった
洗濯物などを描いている 。「室内風景」というやつだ。
 今度の個展には部屋から186メートルくらい離れたタバコ屋の電
話ボックスを描いて出そうと思っている。こちらも「都市風景」、
玄関や応接間には掛けて置きたくない「風景画」である。

 東京生まれの友人に、津軽や下北に通い詰めて、ついには一家を
挙げて北海道へ越して行ってしまった奴がいる。
 「何で、青森生まれの俺が東京を描いてて、江戸っ子のお前が田
舎の風景描いてるんだ?」
 「俺が育った頃にあった古くていいものを、お前達田舎者が入っ
て来てドンドンなくして行く。今じゃ、地方へでも行かなくっちゃ
あ残っていない!」
 「俺なんかは、いい景色の中にいると、それだけで満足なんだよ
なぁ。絵を描くよりも、魚を釣ったり、栗やアケビを採ったりして
遊んでいる方がいいんだよ……」

 私にとって「いい景色の風景」は遊びの場所だったし、憧れ・挫
折・再起と、ものを考え出した頃に在ったのが「都会の風景」とい
うことなのだろう。ネオンやアスファルト、コンクリートの方に創
作意欲を感じる、不幸な身体になってしまったのだ。


 三年ぶりで、ふるさとのいい景色の中で釣りが出来る。スケッチ
の道具より念入りに釣り具を準備、慌ただしく新幹線に飛び乗った。
 親戚、知人友人への挨拶もそこそこに、二日目の昼近く、念願の
奥入瀬の川辺に立った……。

              つづく


《 北の釣り 1989年6月号 》



戻る   次へ