東北への釣行は、渓遊氏等と車で岩手の閉伊川、小本川、雫石川
を探ったのが手始めである。釣果は関東の川に比べものにならない
ものだったが、何度か通っている同行者によると、型も数もだんだ
ん落ちてきているとのことだ。
今年の夏に帰省した時、半日だけ昔遊んだ奥入瀬川本流でハヤ釣
りを楽しんだ。立派な橋や堰堤が出来た代わりに、川の水量は極端
に少なく、泥の多い川になっていた。水中メガネと銛で追い回した、カジカはもう住めないだろう。
東京近郊の山や河は恐ろしい程の勢いで荒れている。人の心も又、
そうであるようだ。そして日本国中何処も、あまり変わらない様に
なって来ている。
故郷の釣りは、昔のままの山河でと望むのだけれども、それはそ
こで生活していない都会人の勝手な郷愁というものなのだろうか。
狭い日本がいつか、美しい姿をなくしてしまった時、“都会人の
勝手な郷愁”をいったいどう始末するのだろうか・・・。
ともあれ、春が来るまで丹沢下ろしに吹かれて、相模川の寒バヤ
釣りにでも通うとするか・・・。
おわり
《 北の釣り 1987年1月号
》