絵を勉強し始めて直ぐは、新しい世界が開け、描く度に上
達していく時期が続きます。人によって速度は違いますが、
ほとんどの場合、目に見えて上手くなっていきます。
しかし、前にも書きましたが、眼の方がその上をいくスピ
ードで進んでいるので、しばらくすると何枚描いても、以前
ほど上手くなったという実感が持てなくなります。描くこと
が楽しみから、苦しみへと変わる時期です。
初心者のほとんどが、物を見てそれを描写することから始
めます。モノクロームのデッサンで立体を平面の紙に描写し、
光を通して見えた物の色を絵具を使って再現することを基礎
的な勉強だとしいるからです。
二次元の平面に三次元の物体を表現するテクニックをおぼ
え、絵具の混ぜ方や筆使いの技術の習得を勉強の中心にして
います。
ある程度のところまでいくと描けなくなるということの原
因が、ここにあるのではないかと思っています。
技術的なことは、ある程度訓練すればそこそこ身に付くも
のですが、そのことだけを目的にしていると、行き詰まるの
は当然のことです。
大事なのは、技法や技術は目的を実現するためにあるんだ
ということに、気付くことです。
ものの本質を客観的に見ること、見て感じること、想像す
ること。感じたことや伝えたいことを発見し、自分の中の第
三者(サド侯爵)も含めた、他人に伝えるための構成力、造
形力を養うこと。「描くときのものの見方」と「描くという
ことについて考える力」を身に付けるための勉強が、本当の
基礎だと思うのです。
技術や技法をひけらかす、画面処理ばかりを考えた作品が
公募展やコンクール等では多く見かけます。技術・技法も職
人の域に達するまでやろうとすれば、長い道のりとしてある
ものですが・・・、それをめざしますか?
名声をはくしたゴヤやレンブラントが、晩年描かずにいら
れなかったモチ−フがありました。そこから生まれた一連の
作品が僕たちを惹き付けて離さない。このことから学ぶこと
は多いと思います。
|