二年程前に、デッサンの技法書の編集に関わったことがあ
る。その時、勉強し直して身に付けた、基礎知識を披露しな
がら、何回かに分けて、デッサンについて書いてみます。
デッサン【dessin】とは単色で描かれた絵のことで、素描
と言われています。少しだけ色づけしたり色チョークを使っ
たり、色つきの紙に描くこともあります。
墨だけを使う水墨画などはそれ自体で作品になるので、日
本画や中国画などは、デッサンというのには無理があります。
制作の途中での構想や細部のスケッチを、絵画(タブロー)
【tableau】と分けて考える、西洋式の言い方のようです。
デッサンは絵の基礎だからデッサンから始めないと、とい
うような考えが一般的にされています。デッサン=石膏デッ
サンというような、極端な人もかなりいます。
日本で、デッサンという言葉が広く使われるようになった
のは明治の末頃で、その時に入門期の木炭や鉛筆での勉強過
程の絵をデッサンと称していたのが原因しています。
最近は、そんな区分けに関係なく、素描(デッサン)で作
品を作り続ける作家もいて、分けること自体があまり意味の
ない時代になってきています。
だからといってデッサンが必要無くなったというわけでは
なく、その概念が広い意味を持ちながら、表現の基礎として
も重要な位置を占めていることに変わりはないのです。
デッサンすることは、「描くということ」や「見るという
こと」を考える上で、とても大事なのだと思うのです。
モジリアニの繊細な線に魅せられて、クロッキーに精を出
した頃がありました。彼が一杯のワインにありつくために描
いたという伝説も刺激的でした。
若かったあの頃、描くということの意味を、それ程深く考
えてはいなかったのですが・・、一生懸命ではありました。
※
参考文献 <「感動 空間・デッサン」 本の泉社・刊 >
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