二川トーチカ トーチカ望遠・近撮・二十年八月の部隊配備図
愛知県豊橋市二川 
二川トーチカ望遠
 
 上の写真は、愛知県豊橋市二川のとある地域を撮影したものです。国道一号線沿いから内陸部の山腹に広がる住宅地を見ています。これではなにがなにやら……そこで写真の一部を拡大しました。

 中央部分に四角く見えるものが、二川トーチカです。現在は、両脇に二階建て住宅が建っているために遠方から見える場所は限られています。
 
 望遠レンズで撮ると、山の稜線が見えないために「ありふれた戦跡写真」になってしまいます。私としては、上のどこに何が写っているやら判りにくい写真の方がインパクトが感じられて気に入っています。 

二川トーチカ近撮
 
 近くから見てみます。前の自動車で大きさを想像して下さい。前面は正方形に近い形状をしています。階段状になっている構造は、至近弾などの被害を軽減するためのようです。
 
 コンクリの上部は滑らかに整形されていますが、大部分は粗い面が見えています。
 構築された当時は装備砲を向ける方向以外は山腹を残していたために、コンクリート表面に接した土中の小石などが密着してこのように粗い面となっています。

 当時露出していたと思われる部分は、滑らかに整形された前面の上縁のみです。当時のこの辺りの地形、また当時のこの陣地の見え方などを想像するのはとても難しくなっていると思います。

 トーチカ背面です。コンクリの高さは1mくらいだったでしょうか。下に、出入り口が見えます。
 
 トーチカ上面から遠州灘の方を見ています。写真には新幹線が見えています。新幹線車中からもこのトーチカはとてもよく見えます。
 通気口のような孔が天井部にあります。

 背面の入り口から内部を見ています。内部は全面コンクリート肌がむきだしです。 砲口部は海岸線に向いています。
 
 内部西側には、煙突状の開口部があります。横に1mくらい掘られ、そこから垂直に穴が上面に通じています。

 内部のちょうど中央部の天井には、煙突なのか通気口なのか、よくわからない開口部が設けられています。途中で折れ曲がりつつ、2mくらいの厚さの天井部コンクリートを貫いています。 
記念写真

 同好の士ら5名による共同探索でした。とても面白い探索でありました。


近くの海岸
 オリンピック、コロネット……それぞれ九州南部、関東地区を目標とした、太平洋戦争の本土上陸戦の作戦です。この遠州灘では、これら主要な上陸作戦の支援上陸作戦が行われる可能性があったのです。
 
 左の図は、昭和二十年八月にこの地域に布陣する予定だった本土決戦部隊の配置図です。黄色に着色した部分が二川地区、赤線がこの二川トーチカの射線です。
 今では何の変哲もない海岸線が、その当時最前線の緊張感に包まれていたというのが、とても信じられません。