20052月の トンテンカン劇場

2005/2/9(水)『吹雪の中で花粉症になるのはとても悲しいです

12月からずっとコミックスの直しをやっていたんですが、やっと終わった〜!と一息ついたあとも、そのあいだ後まわしにしていた用事がたまってバタバタしております。

それにしても今回はおにぎりのお世話になりました。
1月後半から「あ、これは間に合わないな」と〆切が切迫してきて、二日起きて三、四時間寝て(床で)、また二日起きて…という生活になって、これはもたないだろうなあと思いながら、起きるとまず米を二合炊いておにぎりを作る。お茶わん三分の一くらいのお米で小さなおにぎりを七つ八つ作って、お皿に盛り上げてラップをかける。具はサケフレークとたらこと梅干し。
それから大根、人参、かぼちゃ、さといも、油揚げなどの入った具だくさんのみそ汁を大鍋にいっぱい作る。

睡眠不足のときにちゃんとした食事を取ると寝てしまうので、ちょっとお腹がすくと、小さなおにぎりを一個食べて具だくさんのおみそ汁を飲む。それで3時間くらい保つ。お腹がすくとまたおにぎりを一個、みそ汁を一杯。それを延々と続けてほとんど寝ない生活を続けて、う〜ん、よくもったなあ…。最近体力はめきめきと低下してるんですけどねえ(笑)。

そのくらい直すところは多かったのに時間が足りなかったのですが、よくおにぎりに飽きなかったなあ…てとこに感動してしまう。
明日地球が終わる日、私が最後に食べたいのはおにぎりかもしれない。ほくほくの美味しいお米がちょっとさめたところをきゅっと握ったやつに、具は梅干しだなぁ。

大根などの根菜を入れたみそ汁は、夏と比べてサラダなどでビタミンを取りにくい冬の知恵なんでしょうが、私は冷え性なのでみそ汁にしょうがや七味をドカドカ入れて飲みます。とくに豚汁は元気になりました。発酵食品の味噌は活性酸素を分解して血液サラサラ効果をもたらす効果のある健康食品ですが、私にとってお米とみそ汁はそこからパワーをもらう無くてはならないもので、それさえあれば生きていける基本食品です。

メシストも必死で自分でやっていたのは、時間が無かったのでアシスタントの手配ができなかったせいですが(年末年始はみんなタイヘン)、アシスタントが来てくれても今回あまり仕事はなかったろうな…。

「危険な席」の直しをやっていたんですが(コミックスが2月末に出ますのでどうかよろしゅう)、今回原稿を編集部から返してもらったら、雑誌掲載時になぜあんなに印刷が悪くてボケボケでセンがちょちょぎれていたのか理由が分かりました。
インクの色が薄くて印刷に出なかったのです。

3年くらい前に新しい紙を買ったんですが、私が使っているのはKMKケント紙で、金沢は湿気が多くて紙がすぐ湿気を含んでペンが引っかかるので、できれば梅雨が過ぎるたびに新しい紙を買いたいくらいなんですが、製造元のミューズ(神田すずらん通りの小さなお店ですが、日本の画材の紙方面を一手に引き受けている)に頼んで裁断して宅配してもらう以上、少ない枚数では申し訳ない。というわけで全紙で80枚を八切してもらって、B4版で640枚。
その紙が届いて試し書きした時から、ペンが引っかかって、あれ、ラグ(繊維)のプレスが甘いぞ、この紙は不良品だな、ということは分かってたんですが、KMKケント紙の品質が低下しても、私にはほかに選択肢がない。バロンやピーチなどのほかのケント紙も使ったことはありますが、やはりKMKがいいなあ、と戻ってしまう。上質紙も以前使ったことがありますが、ペンがスベりやすいぶん絵が変わってしまう。
だからちょっと品質が低下してもこのケントを我慢して使い続けるしかない。

と思ったんですが、これがホントに使い物にならない紙で、消しゴムをかけるとそこの繊維がケバ立ってムケて、線を道連れにしてカスになってしまう。
「危険な席」の原稿はとにかく描いていてヘンだな、ゴムをかけるとインクが薄くなるな…とは思ったんですが、うすい墨汁で描いた線も印刷ではけっこう出るものだという経験がこれまであったので、そのまま出したんですが、これは薄いインクではなくてインクの染みこんだ紙の繊維が削られて無くなっている状態だったので、まったく違う薄さだったようです。

そういうわけでハゲかけたインクあとを再びペンでなぞって線を修正する…という作業をずっと続けていたんですが、紙が悪いのでそのあとをなぞった線もにじむので、きれいな線が引けなくて、描けば描くほど原稿が汚くなる…という、なんのために修正をやっているのかワケが分からない状況で、さらにバックを描き足そうとするとペンが引っかかる。ゼブラのGペンが引っかかるというのはよほどのことです。これはどんなシロウトでもスムーズな線が引ける一番使いやすいペン先なんですから。丸ペンなんぞ突きささる(笑)。そしてズルズルと繊維を引きずってにじむ。たまにきれいな線が引けたぞ!と喜ぶと、盛り上がったインクが周囲の繊維にゆっくりしみ込んで、にじんでじわじわぐいぐい広がってシミになるのが、じっと見ているとはっきりと分かる。

なぜそんな描きにくい紙に描いたんだ、気が付かなかったのか?といわれれば、ホントに私の責任なんですが、ウデが落ちたな〜と思いながら描いていたんです。ブランクがあったから、絵を描くのがヘタになったし、線を引くのもヘタになったな。

それが全ページ描き換えのページで新しく買ったアイシーの上質紙を使ったら、引けなかった効果線も、汚いカケアミも、アイシーの原稿用紙ではぜんぶキレイに描けたのです。
ああ、紙のせいだったのか…!
と思ってアイシーの原稿用紙を使ってぜんぶ描き直そう!と思ったんですが、これから129ページ鉛筆で下書きして、その上にペン入れして、背景効果を描いて…という元気はとてもありませんでした。時間もありませんでした…(^^;)。

そんな神経の疲れる細かい、でも描けば描くほどセンがにじんで原稿が汚くなって、はらわたが煮えくりかえるという仕事を1月ずっと続けて、終わったその日はなにもできなくてそのままベットに倒れ込みました。

翌日目が覚めるとけっこう元気だったので、年末に大掃除ができなかったからとパタパタ掃除をしたら、その翌日は筋肉痛で動けなくなりました(笑)。あのくらいで筋肉痛になるなんて…ウデが落ちたな、じゃなくてもう歳だな…とガックリしたんですが、じっさいトシなので無理は禁物。
そのあとも毎日元気で飛び回ってるんですが、何かやったあと突然眠気に襲われてコトッと寝込んだりして、気が付くと14時間たっていたりして、睡眠不足を変なところで回復しようとしているようです(笑)。

冬の金沢はお天気が悪くて散歩ができないので(みぞれの中を歩き回ると、体が冷えて体調が悪化する)、その上仕事で毎日部屋でカンズメになってずっと運動不足だったので、体が重くて気持ち悪い。フッと気が付くと、12月には無かったタプタプがお腹とお尻に付いていて、漫画を描くのはホント体に悪いですね(^^;)。
早く体を動かしたい!と春を待ち望んでいたら、外は吹雪なのに(例によって大して積もらなかったが)目のかゆいのや鼻水やくしゃみが止まらなくなって、風邪かな?と思ったんですが、熱も咳も出ないので、ひょっとしてこれは花粉症?外は吹雪なのに、部屋の中では花粉症ってのはなんだかとてもイヤなもんです。
ここ数年私は花粉症発症一歩手前で、去年は凍頂ウーロン茶を飲んでいたせいかほとんど症状が出ず、今年はそれに加えてにがりも飲んでるんですが(私はニガリスト!)、今年の花粉は史上最高の飛散量だそうで、たぶんそんなものでは収まらないくらいヒドイらしいので、いよいよ発症のときが来たのか…?
いやだなあ。雪国に住んでいてずっと曇天に押しつぶされそうになっている人間が春が来るのを鬱陶しく思うのは、生きる喜びが一つ消えることですよ。

戦後に人工造林したスギの木をぜんぶ引っこ抜いて、そのスギで日本中に美しい木の家を建てて、そのあとにシイやナラなどもともと生えていた広葉樹を植樹する、というワケにはいかないんでしょうかねえ。
宮脇先生によりますと、向いてない土地に植えられたスギはこの土地が自分に向いていない、このままだと子孫が育たないという危機感を持って、さらにより多くの花粉を付けてばらまくそうです。
スギ林が荒れるのは伐採などの手間をかけないからだ、といわれるのもその土地に向いてない植生だからで、潜在自然植生の森は人が手をかけなくても平和に勝手に自分たちで森を運営して、人には迷惑をかけないそうです。
そういう自然をもう一度取り戻すために、お役所はなにか動いてくれないんでしょうかねえ。
お役所が動かないなら、人が動くしかないですねえ。