200411月の トンテンカン劇場

2004/11/18(木)『メンテナンスのどろ沼でアップアップしています

このごろ朝起きると右手の親指をツンツンつつくのがクセになっています。
10月の初めに右手の親指を切ってしまって、生まれて初めて三針ぬった。
春菊を茹でようとしてシンクのタライいっぱいに広げて洗っていて、まだお湯が沸かない。ちょっとお腹がすいたな、と納豆など食べていて、おっ、お湯が沸いた。早く春菊をナベにほうり込まねば!とあわててタライに手を突っ込んだら、春菊の下に包丁が上を向いて沈んでいて、その包丁のカドにぐさっ!
ヨコ1.5センチくらいの傷なんですが、バンドエイドではおさまらないくらいの流血沙汰で、連休中だったので休日診療している外科医院を必死で探して、そこの当直の若い体育会系の先生が三針ぬってくれたんですが、歯を抜くときみたいな麻酔注射はしてくれたんですが、皮膚を縫うのはゾーキンを縫うのとは違ってとっても痛かったです…。
ケガをしたサッカー選手はいつもこれに耐えてるんだなあ、と思っていたら、TVでクマに襲われて38針ぬった…というニュースをやっていて、38針もぬわれたら、私きっと死んじゃうよ…。

毎日ガーゼを替えに通って、一週間で抜糸したんですが、お医者さんに言われたとおり一番上の皮膚は繋がらなくて、その切れ目がどんどん開いてかさぶたとなってパラパラ落ちていって、その切れ目が広がったところから二番目の皮膚がニョキニョキ盛り上がってきて、おお、なんだかカルデラ火山みたいだぞ、って毎朝さわって確かめている次第。

ケガしたことのある人にはお分かりでしょうが、右手の親指をケガすると細かい日常作業がなんにもできません。〆切前の漫画家だったらきっと原稿を落としていた事態ですが、〆切前の漫画家はこういうケガはしません(笑)。水仕事をしないというんじゃなくて、気が張ってるとこういうバカなケガはしないものです。気がゆるんでるんだなあ…と反省しました。

HDクラッシュで半狂乱の中、コットンとゴムで編んだ保護用サックを右手親指にはめて「いたいよ〜、いたいよ〜」と泣きながらマウスを操るハメになって、この秋、私は天中殺、それとも大殺界かなあ…?って落ち込んでたんですが、なんだか日本全体が天中殺だったような…。
大雨は降る、台風はつぎつぎ来る、クマは出る、地震は起こる…。
地震だけでも大変なのに、そのあとの雨や雪で被害がふくらんでいくとは…。たしかに雪自体が「災害」なんですけど。

雪って本当に大変なんですよ。20年前に母が倒れたときに私は東京の家財道具をいっさいがっさい引きあげて、金沢の貸し倉庫を借りてそこに入れて、そのあと近所の空き家を借りて、そこに家財道具を移そうとしたら、ちょうど85年の大雪が降って、借りた家が路地の奥だったので車が入れなくなって(ただでさえ細い道が「雪かき」で両脇に積み上げられた雪でますます細くなって、車が通れなくなった)、春まで「家なき子」状態になって、人の家に居候するというのは居心地が悪くて(実家とはそういうものです^^;)、そのうえ貸倉庫と貸家の両方の家賃を払わなくてはならなくなって大変でした(^^;)。

「家」が人間の心にとってどれだけ大切なものかをあの時思い知ったので、95年の阪神大震災のあとも何ヶ月も市役所の廊下をパーティションで区切ってそこに布団を引いて暮らしている人がいるのを見たとき、世界第二位の豊かな国がどうしてこんなに人の心を踏みにじって平気でいられるんだろう…って信じられませんでした。

金沢生まれの私には、隣の隣の積雪量が数倍多い新潟県の産み出す人材ときたら、みんな強いな〜、バイタリティがあるな〜、かなわないな〜と、ずっとリスペクトする対象でした。
東京で活躍する人ばかりでなく、地元の新潟でも東京の「コミックマーケット」に次ぐ規模の「ガタコン」(ニイガタ・コンベンションの略)を運営していて、なんでこんなに盛んなんだろう?とか、2002年のW杯のために新潟スタジアム「ビッグ・スワン」を作ったものの、新潟はサッカー不毛の地でお客が入らなかったので、公務員が頑張ってタダ券を配って、それで「新しくできた競技場をちょっと見に行くべ〜」と2001年のコンフェデレーション杯を見に行った人たちが(「W杯のシュミレーションなのに連絡バスが遅れて大混乱、これで大丈夫か?」というハデな新聞の見出しを覚えている)その時スタジアムで対カナダや対カメルーン戦を見て「サッカーってなんか面白いな〜」と思って、2002年はW杯の試合に熱狂して、そのまま新潟アルビレックスのサポーターになって、2003年は試合毎に4万人のスタジアムを満員に埋めて、J2なのにJ1より多い観客動員数を記録するという快挙を達成しました。
雑誌で「孫といっしょに行って、ワイワイ騒げるのが楽しくて」とオジイチャンたちが答えているのを見て、もちろん新潟スタジアムに行くのは新潟市のほんの一握りの人でしょうが、ほかの地方都市、とくに金沢ではこういう反応はぜったい期待できない。新潟人はサッカーが好き、というんじゃなくて、刺激を感じる皮膚のツボが多くて、それに反応するココロが深いんだろうなって思いました。
TVで見ていても、新潟のみなさんは明るくて強くて「お上には頼らない」という自力本願の姿勢を感じるので、きっとどんな困難も克服して立ち直られるだろうと信じています。
四国や兵庫や三重県や伊東市で家の屋根をとばされた方々も今頃大変だと存じます。 どうか気に入らないこと、不足なことがあったら我慢せずに遠慮せずに大声で喚きちらして下さいね、ニブい私たちの耳にも聞こえるように。大したことはできませんが、あれはど〜なってる、これはど〜なってるとタバになって文句をつけることくらいはできると思いますから。

ところでこれも天中殺の続き、…の話として読んで下さい。
先日私はベッドの横の床ではいずり回るムカデを見ました。すごいスピードでたくさんの足でクネクネと旋回する10〜15センチのミドリ色の細長い虫が床をはいずって、本棚のかげに逃げ込むのを、私は見ました。
このHPを見ている方のどのくらいの方が、これまでキャンプ先でも田舎の実家でもなく、自分の部屋でムカデを見たことがあるかは分かりませんが(五割を切る?もっと?)、私も小さいころ天井から降ってきたくらいの記憶はありますが、ものごころついて以来じっくり目にしたのは初めてでした。
すごいスピードで(なにしろ足が多い!)クネクネ動き回るミドリ色の虫を見たとき、私は恐怖に襲われましたが、その恐怖には「だれかの魂か呪いが形をとって現れたんだ…!」というオカルト的要素があったように思います。
そのくらいムカデというのは町なかの住居に現れるのが相応しくない虫で、自分の部屋が突然ジャングルに変わったような気がして、私はどこかで間違ったスイッチを押して、なにか超自然的意志が働いて「違う世界」に迷い込んだんじゃないか…という恐怖に襲われたようです。

とにかく「結界」としてゴキブリ用スプレーを廊下に置いて、インターネットで「ムカデ」を検索したら、「ムカデ・フマキラー」というものの存在を知り(あるんです!)、ナフタリンを部屋中に置くと出てこないという話も聞いて(2チャンネルに「害虫との戦い」掲示板があって、ホント助かったし「私だけじゃないんだ」と励まされました)、その晩は床の上で毛布を巻きつけて眠って、翌日「ムカデ・フマキラー」とパラゾールを山ほど買ってきて、それを部屋中にバラまいて本棚の周囲を掃除していたら、フラフラとムカデが出てきたので、夢中でスプレーを噴射し続けて、しばらくのたうち回っていたので、こちらも決死の思いでスプレーを噴射し続けて、し続けて、し続けて…どのくらいスプレーのボタンを押していたのか記憶がないくらい噴射し続けていたんですが、気がつくとムシは動かなくなっていました。前日より動きが遅かったのは床にまき散らしたパラゾールが効いていたのかな…。

いったいどうしてムカデがウチの部屋に…と考えたんですが、ふと思い当たったのはこのごろ散歩で近所の山を登ったり降りたりしているんですが、そこでムカデの卵入りの土をスニーカーの裏にくっ付けてきて、ウチで孵化した…?
「ばからしい。近くに庭や公園があれば、そこから迷い込んでくるものさ」と父は言うんですが(割りばしでつまんだムシをティッシュでくるくるくるみながら「これはムカデじゃなくて、ヤスデの子だ」とも言ったんですが、どこが違うんじゃ〜っ!)たしかに以前近所の路地をアオダイショウが悠々と横切るのを見たとき、「へえ、いるんだなあ」とちょっと感動したものですが、私の部屋の床の上をアオダイショウが横切るのを見たことはない。見たくないぞ、ぜったい。

最近の異常気象で公園から迷い込んできたのかなあ…とも思うんですが。
今年の春から金沢ではマツクイムシ(だかなんだか)が異常発生して、町中の街路樹の木の葉が虫食いだらけになって、ウチのベランダのバラの葉っぱも食われて半分に減ったし、兼六園の景観もいちじるしく損なわれて悲惨だったんですが、山の方でも被害がひどかったらしくて、エサが無くなってクマが里へ降りてくるのはそのせいもあるって言ってる人もいたし…。

でも私のお気に入りのお散歩コースの卯辰山は五回に一回はヘビに出会うくらい「野生の王国」で、だから散歩してるといい風が吹いてきて、その中で太極拳の練習をするととっても気持ちがいいんですが、ムカデも山ほどいるだろう。それが…という疑念を捨てきれず、このごろ散歩に出ると繁華街ばかり歩いています。…ヘナチョコです、私。
ヘビやトカゲやクモはわりと平気なんですが、ミミズやムカデはホント苦手です。のびたりちぢんだりしてくるくる動き回る節足動物が駄目みたい。ネズミはどうだろう。至近距離でエンカウンターしたことがないので分かりません。エンカウンターしたくありません。

インターネットで「マンション生活がイヤでやっと郊外の一戸建てに引っ越したのに、山ほどムシが出てノイローゼになりそうです。もう限界です。また引っ越しを考えています」という方がおられまして、「スローライフがもてはやされる昨今ですが、自然の生態系とは人間だけでなく、多様な動物や植物、昆虫、微生物が共存する環境のことです。それらを駆逐して追いやって作ったのが今の私たちの生活です」というやりとりがあって、たしかに人は「キモチ悪い」といってムカデを嫌いますが、ムカデを油に漬けたものは昔から火傷の薬として珍重されていたし、毒も持たず(刺されるとハレるそうですが、マムシのように死ぬことはない^^;)、悪い虫は捕食して、シロアリのように家を壊すこともなく、病気を仲介することもなく、落葉を食べてフンを吐き、それによって微生物が葉っぱを分解・醗酵して腐葉土を作って、植物が豊かに育つ土を作ってくれる「益虫」だそうで、部屋の中で見たら割りばしでつまんで窓の外に放り出すのがいいそうです。

でっきまっしぇ〜〜〜んっ!!!

スローでエコでオーガニックな生活が、毎日天井からムカデが30匹降ってきたり、靴をはいたらその中にムカデがいて刺されたり、布団をめくるとそこにムカデいたりする生活だとしたら、部屋中にパラゾールをまいてその香りの中で息が詰まりそうな私には「スローライフ」はムリです。送れません。ごめんなさい。