20041月の トンテンカン劇場

2004/1/12(月)『レンブラント・ゴールドの誘惑に、ついフラフラと

最近またH.P.が怠けがちになっておりますが、2002年の9月から03年の2月までインターネットから遁走していたところをみると、私は秋から冬にかけてパソコンを使いたくなくなる…というわけではけっしてありません(笑)。
2002年の9月には、描いている原稿を読み返したときに、これすっごくつまらないんじゃないの?とつまづいて、どうしよう?こんなの描いたってしょうがないのかな?と最初からネームの点検をやり始めたら、どんどんドロ沼に入り込んで、トゲトゲ光線出しまくりで、こっちもトゲトゲ、パソコンの電磁波もトゲトゲで、世界中がトゲトゲでできているように思えた(笑)。
直したあとは「面白い!」と「ポン」とタイコ判を押しますが、私には面白くても、他の方には面白くないかもしれない(と、作家は思うものなのです)。うん、でも、かなり楽しいと思うぞ(笑)。

去年の9月からは、私はちょっと「アイデア降下週間」に突入していました。
「アイデア降下週間」とはなにか?
作家というのはお話しを考えることがお仕事なんだから、いつでもアイデアが雨のように降ってくるといいのに、と思うんですが、どうもそういうワケにはいかなくて、アイデアは天から突然カラスのフンのように降ってくる。
カラスのフンは誰にでも降るが、アイデアは天使に念を送っている者の上にしか降ってこない…と以前に書きましたが、たいがいは「〆切ですよ」という編集さんの電話にムリヤリ机の前に座らせられて、白い原稿用紙を前にウ〜ンウ〜ンとうなって(ガマの油はとれません)、「ああ、ダメだあ〜」と叫びながら仕事部屋を飛び出して、「アタシは漫画家に向いてないんだ〜、もう止めたほうがいいんだ〜」と叫びながら、そこらへんの自販機やゴミ箱をけとばして(うそうそ)、とにかくやたらと歩きまわって(本当によく歩きます。ウォーキングのリズムは脳に刺激を与えるようです)、そんなことを繰り返しているうちにやっとなんとか…というカンジなのですが、今回は突発的にキャラクターやエピソードがつぎつぎとアタマに浮かんで、いったいなんで私はこんなことを思いついたんだろう?とワケがわからないまま、キレギレにバラバラにアタマの中にポコポコと浮かぶ画像に因果関係を与えて、時間軸に並べて、なんとかストーリーに仕立てようと構成的努力をする…という、作家としてはとてもオメデたい日々だったのですが、ココロはあっち側へ行っていて、一市民としてはまったく使いものにならない。心境は「地球よ、どうか私を置いて回っておくれ」(笑)。

02年の5月から描いている作品は「サヴァールをききながら」の「司祭」「錬金術師」「騎士」の三人のキャラクターが出てくるコテコテのコメディなんですが、9月に考えついた話はそのウチの「錬金術師」を主役にして、15、6世紀の北ヨーロッパを舞台にしたかなり重い「歴史もの」で、ヨーロッパ全体の資料調べが必要で、ま、この辺だろう?って当たりをつけて買った資料が目の前の本棚にいま並んでるんですが、その資料調べに没入すると終わるまで他のことができなくなるので、今描いている作品を放りだしてしまったら困るので(^^;)、キャラクターとだいたいの構成を固めるくらいにして、ネームに入る前に寸止めにしています。

こういうキャラクターでこういうストーリーが描きたい!と思っていても、どうせ資料調べをして彼らをネームの中で動かせ始めると、ぜったい予想通りには動いてくれないってことは分かってる。構成もストーリーもどんどん変わっていって、「うわ〜、ダメだ〜っ!」と急降下しては、「いやっ、イケる!」と急上昇する、作家にとって一番楽しいダッチ・ロールはしばらくお預けです、残念(笑)。
登場人物三人のそれぞれの背景を50ページづつ描いて、50p×3回。プラス最後の50pで三人がぶつかってカタストロフで、200pのコミックス一冊分くらいかな、と職業漫画家の計算(笑)。
かなり重いテーマなので、歴史と登場人物たちをうまく組みあわせて構成できるかなあと、今からドキドキズキズキ、すっごく心配してます。
その気になれば救いようのない暗くて重い話になるんですが、暗くて重い話を暗くて重く描くのは芸がないなあと最近の私は思っているので、ちょっとハズした仕上がりにしようか。でも誰も描かないくらいまったく救いようのない重た〜い、ど〜しようもなくクラ〜い話を描いて、読み終わった人がしばらく動けなくなるくらい落ちこませてみたい気もするなあ〜。
どの辺のフェーズでやるかはネームに入ってからゆっくり考えればいいんですが、北ヨーロッパは地中海と違って暗くて、町自体にある種の陰鬱さが漂っているので、読んだ人がレンブラントの絵の中の金や赤の色彩が目に浮かぶように、登場人物たちの情念を描きたいなあ。なんてカッコイイこと言っていられるのは今だけで、どうせ、あの輝きが出ない!こんなのレンブラント・ゴールドじゃない…!と七転八倒することは、今から目に見えているんですが(笑)。

そんなことをしているうちに、私の頭にもうひとつの情景が浮かんだ。ポン。
主人公は吟遊詩人。
北ヨーロッパの話にも「音楽」が重要なファクターとして出てくるんですが、こちらのほうは「中世にビジュアル系吟遊詩人がいたら?」とか「モー娘。を中世の吟遊詩人にしたら?」とかおバカなアイデアがつぎつぎ浮かんで、たぶんコメディで、「インチキ歴史モノ」なので資料調べは要らないんですが、キレギレの情景やキャラクターたちは浮かんできてももう一つなにか大きなものが降ってこない。ミシンとこうもり傘が解剖台の上でまだ出会っていない。
ま、これを描くまでに踏みこえなければならない山は幾つもありますので(途中で遭難するかもしれないし^^;)、ミシンが降ってくるのをゆっくり待つことにしよう。

なんで突然「アイデア降下月間」に突入したんだろう?と腕を組んで首をひねるんですが、ひょっとすると「パイレーツ・オブ・カリビアン」を見て「海賊が描きた〜い!!!」と騒ぎまわったせいかもしれないなと思う。

でも海賊漫画はいさぎよく諦めました。今の私にはディップが演じたジャック・スパロウ以上の海賊を描く自信もモチベーションも無い。私には彼が最高の「海賊」なのです。
そのエネルギーが違う方向に発散したのか。あるいはひょっとすると今描いてる原稿から逃げるためだったのか…。

注文した「パイレーツ・オブ・カリビアン」のDVDがやっと届いたのですが、予約をしなかったせいで4枚組キャラクター・カードがもらえなかったことが悔しくてたまらない(涙)。「アステカの金貨」(要:応募)なんかより、カードの方が欲しかったのになあ。