20038月の トンテンカン劇場

2003/8/12(火)『アミノ酸に負けないように

梅雨が終わっても、なかなかカラッとした青空は見られません。
でも暑さはいつもの夏並みに暑い。
先日テレビでどこかのお医者さんが「夏ばて」というのは暑さを防御できなかったむかしの話で、今は「クーラーばて」ですっていってたけど、正しいと思う(笑)。

夏はクーラーと生死を賭けて壮絶な戦いを繰り広げる季節です。
なるべく使わないように。スイッチを入れたらお腹をガード。腹巻き、ホッカイロ。使うときは扇風機と併用して、設定温度は細かくチェック。使用後は必ずお風呂に入る。流れの悪くなった細い血管をもう一度広げて、血流を全身に行き渡らせるのだ。

とくに寝るときにクーラーをかけて起きたときにゾンビになってるか、扇風機で我慢して暑さで睡眠不足になるかは、前門のオオカミ、後門のトラのどちらを選ぶかと同じくらい一番アタマを悩ませて決断のつかないムツカシイ問題ですが、とにかくセルフ・コントロールして被害を最小限に食い止めるのだ。

このところ食べるのはおそうめんばかりです。
お惣菜は、ゴーヤ・チャンプルーにこっています。
以前は見ることのなかったキュウリが太ったようなこの野菜が、金沢の八百屋さんに並ぶようになったのはいったいいつ頃からだろう?沖縄に行ったことがないので(すっごく、行きたい!)料理法がわからなかった最初のうちは、じっと眺めて素通りしていました。そのうちデパ地下のお惣菜屋さんにもゴーヤを使った料理が並ぶようになって、食べてみるとそのニガ味と歯ざわりがクセになって、自分でも買ってゴーヤ・チャンプルーに挑戦するようになりました。でも私の作るチャンプルーは味がアヤシイ。でもゴーヤは美味しい。ああ、 沖縄へ行きたい。せめて沖縄料理店に行きたい…!

ところで、8月3日にクレイジー・ケン・バンドのライブに行ってきました。
場所は金沢のライブハウス「エイト・ホール」。
5時過ぎにライブハウスの前に行って行列して整理券をもらって、289番。ううっ。

5時半から順番に入場開始で、入れたのは6時前で、オール・スタンディングのためにテーブルを取っ払ったのか、レンガのカベや床がむき出しになった何もない四角い空間で、もらったワン・ドリンク・チケットでジンジャーエールをすすりながら、カベにもたれて開演を待ちました。
6時半にスタート!のはずが、 始まったのは7時前で、コンサート開始まで二時間くらいずっと立ちっぱなしで、このごろ腰痛が悪いのですごく辛かった。
でもやっと出てきたクレイジー・ケン・バンドの面々はもっと辛そうでした(笑)。
リーダーの横山剣さんはたしか43歳で、ほかのメンバーもそんなに若いというワケではないので、昨日は富山で公演だったのでスケジュール的にキツイだろうし、なにせ狭いステージに至近距離で30個くらいのスポットライトが当たっている。至近距離で白熱球30個はどんなにクーラーが効いてても熱中症になるくらい暑いと思う。
一曲終わるごとにタオルで顔をふいたり、ボトル式の酸素吸入器で呼吸をしたり(これ、以前出版社のお中元でもらったことがあるが、しめ切り前の漫画家もとても元気になる^^;)。大変だな〜と思いながら、私もだんだんのってきて踊ろうとしたとたん、グキッ!
ああ。あっちもこっちも年寄りや…。

私の腰はどうもオール・スタンディングに耐えられそうにないと、ちょっとパスして帰ろうかなあ〜と思ったんですが、だんだんケンさんがのってきて、ケンさんがのってくるとなんだかバンドの音が変わって、舞台に気合いがみなぎって、二本のギター、サックス、トランペット、トロンボーンのホーン・セクション、そしてドラムに女性コーラスの奏でるバンドの響きが低くなり、鋭角的に、攻撃的になって、気がつくと踊り出していて、「あっ、ダメよ、腰が折れちゃう〜」と止めようとしたら、不思議なことに動かないはずの腰が動く。踊っているうちに腰の痛みが消える(笑)。
腰痛ってひょっとすると神経性の病気なのか…?
いいや、養老院の訪問公演はやるべし。老人は寝たきりにさせちゃいけませんってことなのか…(笑)。

ホールは最初のうちはクーラーがきいて涼しかったんですが、狭くて天井の低い空間にたぶん400人くらい入って、だんだんクーラーも空調も利かなくなって(この狭い空間でタバコ吸う人の神経が分かりまへん〜)、手にしているハンカチはしぼると水滴が落ちそうなくらいビショビショになって、歌って歌って歌ったあげく「これでさよなら〜」とケンさんが言って引っ込んだときはこちらもヘトヘトで、アンコールなんかぜったいやらないで下さいね、二度と出てこないで下さい!と思ったんですが、これでさよならはお名残惜しいわ…という気持ちもあってアンコールの拍手を続けて、タオルを首に巻いた彼らが再び出てきたときは、疲れてるだろうに、ホントーにごめんなさいね…って思いつつ、「マイ・ウェイ」や「GT」を歌う彼らに拍手しようとしたらもう手がぜんぜん動かなくて(笑)。でもここまでやってくれる彼らに拍手しなかったら、もう私人間やめた方がいい!と、動かない手を必死で動かして拍手して、それに答えて彼らがまた歌って、おい!いつまでやるんだ〜?いいかげんにしろ〜!と拍手し続けて、その拍手に彼らが答えてまた歌って…と、ホント地獄でございました(笑)。

こういうやったりとったり(やりとり)があるから、ライブは面白いんですよね。
でも狭いライブハウスは舞台の上も下もみんなヘトヘトで、暑さと熱気で蒸気が立って、最後には私の頭に明石の花火大会がよぎったことを告白します。

終わって外にでて、思い切り空気を吸い込んで深呼吸したら、あれ?
私なんだかすごく元気になってるみたい。
やっぱり人は踊ったり歌ったりしないとダメなんですねえ。

音楽や絵画を言葉にしようとするといろいろなものがこぼれ落ちますので、クレイジー・ケン・バンドの音楽については、とにかく聴いてください!ですが、一言だけこのバンドの面白いところ。
これまで日本人はプレスリーのマネをしたり、ブルース・スプリングスティーンのマネをしたり、マイケル・ジャクソンのマネをしたりして、「西洋人」や「黒人」のフリをして音楽を作ってきましたが、ケンさんは「オレたちは足が短くて、リズム感が悪い日本人なんだよ。人からかっさらったモノを商売道具にして歌っているインチキ野郎さ」ってどうどうと歌う。
「オレたちはインチキ野郎さ」って歌えば歌うほど、彼らの音楽はスタイリッシュでダンディで新しい音楽になる。それは彼らがノスタルジックなコピー・バンドではなく、創造的「美学」を持っているから。
そういうところに呼応して、野坂昭如さんや森光子さんは踊るんだろうなあ…。
金沢公演でも年配のお客がけっこういましたが、東京の方でやるときはもっと年輩客が多いそうです。

しかしオール・スタンディングは正直、ちょっとキツかった。
3曲に1曲は座りたいです(笑)。
今度は武道館か渋谷公会堂、いや、立ったり座ったりが自由の野外コンサートに行きたいな。

ところで最近読んだ本に「個々の物質を構成する量子はそれぞれの振動数を持つ」と書いてあったんですが、音楽の本質は振動です。
乳牛や酒樽に音楽を聴かせると美味しい牛乳やお酒が出来る理由はこれではないか?という論旨だったんですが、これがホントだとすると、量子も分子もタンパク質もアミノ酸も酵母菌も、踊っている。
宇宙が踊っているのに人間が踊らないと、それはそれは宇宙に対する反乱、歴史に対する裏切り、自然に逆らって自ら衰亡の道を選ぶことです。

というわけで、アミノ酸に負けないくらいに踊りましょう。
まずは郡上八幡の盆踊りでひと踊り。はっ!
ひちりょうさんぶのは〜るこま、は〜るこま〜!

 

2003/8/2(土)『!ゴキゲン!お天使バンド

久方ぶりにこのMENUページのトップイラストを変更しました。
あのキモノのお姉さんにはほんとうに長いことお世話になってしまいました…m(_ _)m。

印刷でトラブルことに臆病になっているので、デジタルにはなるべく頼らないようにしようと思って、最初は発色のいいカラーインクを使ってこのイラストを描き始めたんですが、いつの間にかW&Nの透明水彩のパレットばかり使っていて、シャドウはリキテクスで入れて…と、やっぱりカラーインクは使いにくいんですよねぇ…。
色やその配置やバランスを考えながら、それぞれの画材の使い方も考えながら描かないといけない、というところがカラーイラストの難しいところですね。
どういうことかといいますと、たとえばカラーインクは早く紙にしみ込んで色が固定するので、ボカすときは水分を補給しながら早く筆を動かさなきゃいけないとか、塗り重ねると下の色が動くのでなるべく一度で色を決めて塗るべしとか、透明水彩はあとで色が薄くなるので濃いめに塗らなきゃならないとか、色とバランスを見ながら使用ツールの特性まで考えてアタマと筆を動かして一枚の絵を描き上げるのは、技術と反射神経を反復練習で鍛えて、個々人がつぎつぎと違う動きを無意識にくり出して、それが「勝利」という一つの目的に向かうタクティクスに結実するサッカーの「オートマティズム」とそっくりだ…というのは牽強付会か…。

このバックはルネサンス風の神殿にしてみようかな、とも思ったんですが、けっきょくレンガ壁のライブハウス風にしました。

ライブハウスといえば、去年の11月中旬。金沢の町を歩いているとき、チケットハウスのウィンドウに「エゴ・ラッピンの公演チケット 売済」という貼り紙を見て、「なんだ、こりゃ〜?」
大慌てでインターネットの公式サイトやチケットビューローを捜すと、11月24日に金沢のライブハウスの公演がある。そんなの聞いてないよ〜!?
福井のフェニックス・プラザ公演は前から決まっていて、行けないなあと思ってたんですが、11月始めに突然金沢公演が決まったそうで、その場所は?というと金沢のライブハウス「8(エイト)ホール」。ん?ここ、W杯のときに「金沢でパブリック・ビューイングできる場所」というので見たことがあるぞ。たしか2002年の春頃に出来たばかりのお店だが、と思いながら電話をかけると、「チケットはすべて売り切れました。申しわけありません」。予約から数時間で売り切れたそうです。そりゃそうだろう。「濱マイク」で知名度は上がってるし、それでなくても金沢のFMはエゴ・ラッピン・ファンでしょっちゅうかけてて、金沢の「タワー・レコード」ではあんなに「NightFood」が売れてたんだもの。

しかしここで諦めてはエゴ・ラッピン・ファンの名がすたる。
戻りチケットが劇場の窓口に出るかもしれない、行けなくなった人がチケットを譲りに来るかもしれない、ひょっとしてダフ屋が出るかもしれない(なにせW杯の5ヶ月後ですから^^;)。
24日の公演日の開始かなり前に、電話で聞いた「8(エイト)ホール 」前に行ったら、そこにはすでに女の子たちが数組並んでいて、その子たちに「窓口はどこ?戻りチケットはないの?だれか余ってるチケット持ってない?ダフ屋はいないの?」と聞いてまわると、なんだか冷たいとがめるような目で見られて、考えてみれば私のいってることは全部ルール違反でかなり法律にも触れていて、ちゃんと期日にチケットを買って自由席のいい席を取るために何時間も前からまじめに並んでいる彼らが「いったい何をいってるんだろう、この人」って思ったのも仕方ないのかもしれませんが、私は金沢でよくこういう目にあう。あんた、ダレ?どっかへ行っちゃいなさいよ。
お嬢さんたち。お祭りってルールを破るためにやるもんなんですよ。まじめにお祭りやっていったいどこが面白いんですか!?

コンビニの横に入り口があってその細い階段の上に「8(エイト)ホール 」があるらしいんですが(エイトというのはビリヤードの8番ボールのことらしい)、私はそのうちダフ屋が出てくるかもしれない、余ったチケットを売る人がいるかもしれない、としばらく列から外れて並んでいたんですが、開演2時間前くらいに奥の方からベースとドラムの低音が聞こえてきて、うわっ、リハーサルやってるんだ。
森くんやよっちゃんが(エゴ・ラッピンの二人の愛称)初めてのホールで音の響きとか確かめてるんだなぁ。思わずそのコンクリート壁にしがみつきそうになったんですが、その壁は厚く、私と彼らのあいだに立ちふさがって、やがてその音が消えると、公演前にこれから晩ご飯食べるのかなあ。コンビニ弁当かなぁ。それともマラソンやテニス選手みたいに公演前はバナナ一本で、終わったあとちゃんと食事をするのかな?
なんて思いながら、どうも戻りチケットを扱う窓口もダフ屋もキャンセルチケットも出ないようで、こりゃダメだなと思って、お嬢さんたちやアベックや年配のちょっと変わったオジサンの一団が並んでいるフシギな行列を横目で見ながら、とぼとぼとウチへ帰りました。開演までまだかなりあるというのにその列はとても長く伸びていて、開かずの扉の向こうにある「8(エイト)ホール 」は周りの建物から見てそんなに広いところとは思えず、この人たちはみんな入れるんだろうか?と入る希望がなくなったモノが心配してしまうくらい、長い行列でした。武道館だって今はいっぱいに出来るグループが、いったいなんでこんな小さなライブハウスで(80席、と私はふんだ)コンサートやるんだろう?とブツブツつぶやきながら、そういうライブハウスだからやるんだろうな、とも思いました。帰り道、タワ・レコでヤケ買いをしました(笑)。

今でもあの時壁の向こうから聞こえてきたリハーサルの音を思い出すと、ちょっと切なく胸が高鳴ります。あれは町へやってきたサーカスが人に「こことはちがう場所」へ行こうよと誘う音楽です。ハーメルンの笛吹きが子供たちを誘って、迷子にして、やがては川へ落とすために奏でる音楽です。

そのつぎは東京スカパラダイス・オーケストラでした。
5月にまた8ホールで公演があって、今度こそチケットをちゃんと手に入れるぞ!と、発売日にキチッとスタンバイして(つまり、徹夜)、10時からケータイで興行元のキョードー北陸に電話すると「ただ今混雑しております。しばらくしておかけなおし下さい」というあの返事。それからリダイヤル、リダイヤル、リダイヤル〜!17分後に繋がってオネーサンに言われたのは「金沢「8ホール 」は売り切れましが、新潟なら残っております。」
ばっかも〜ん!新潟へ行くくらいなら、東京へ行くわい。
きっと新潟会場は広くて、金沢の「8(エイト)ホール 」はホントーに狭いんだろうな。
これはもうダフ屋探しにも行かなかった。涙。涙。涙。
でもスカ・パラ、この10年大変だったよね。ホントーに売れてよかったね。

第三弾はクレイジー・ケン・バンドです。
横浜を根城にずっとライブ活動を続けてきたバンドですが、いちおうロック・バンドなんですが、ロックや矢沢の中に歌謡曲や美空ひばりが入っているというヘンなバンドでして、その評判ときたら野坂昭如が踊ったとか、森光子がファンだとか、これはぜったい好みだ、行きたい、行かねば、と思いつつ、どーせダメだろうな〜。とたった一回の経験にこりた軟弱な私は、チケット発売日から一週間くらいたってプレイガイドの前を通りかかったら、「前売り券あります」の看板を見た。ありゃま、金沢では人気がないんだね。それともこれまでテーブル席だった「8(エイト)ホール 」が、オール・スタンディングのライブハウスに変わったのか(行ったことがないので想像で言っています)。
というわけで金沢のライブハウスのチケットを初めてゲット!
8月3日にクレイジー・ケン・バンドの公演に行ってまいります!