20024月の トンテンカン劇場

 

2002/4/26(金)『データ入稿はオソロシイ、という内輪の話』

遅くなりましたが、上のイラストはWinsor&Newtonの透明水彩で描いたものをスキャナで取り込んで、バックとワクをいじった以外はほとんどそのままです。
Winsor&Newtonの透明水彩は描いたあと、色が沈下して薄くなるので何度も塗り重ねなきゃならなくて大変…とボヤいた覚えがありますが、アルシェArcheというフランス製の水彩紙を使うと一回塗っただけで水彩の色がそのまま固定して鮮やかで綺麗でラク!ということを最近発見しました。 ただし表面がザラザラしていて細部を塗るときよく筆がつっかえるので、緻密なイラストはBBケントの方が向いてるかも…。カラーインクはムラになってキレイに出ないので、水彩とパステル専用の紙みたいです。

絵はがきはあれからどうなったか?という話ですが、同人誌をやってる友人の話ではデータ入稿は思い通りに仕上がらないのがアタリマエで、「アナログ入稿の方がまだ原画に忠実に上がる」。ではなんでみんなデータ入稿するのかというと、本のタイトルなどのロゴを「写植」で印刷所で入れてもらうとそのぶん料金が高くなる。データ入稿だと「Photoshop」や「Illustrator」などを使って自分でロゴを入れられて安い上に、レイアウトやデザインもできるから!だそうです。

先日会った神戸の友人は日本で一二を争う印刷会社の関西支社で販促(販売促進)のデザイナーをしていて、家具の写真やイラストを「Photoshop」に取り込んで、それを「QuarkEXpress」(DTP:デスク・トップ・パブリッシング・ソフト)に落としてMOに入れ、それを印刷所に渡して「カタログ」や「ポスター」を作るという仕事をしていました。

「データ入稿はムツカシイわー。機械を使う人が「絵」を見る目、持ってるとはかぎらんもん。」
「はあ、そんなもんか…」
「でなー。これなんでか分からんねんけど、みどりから青、むらさきにかけての色環の色がデジタルではとぶねん」
ギクッ

「サヴァールをききながら」と「吟遊詩人の話」を見ていただだければ分かりますが、ボケボケになった三枚は青とみどりとムラサキをやたら使った絵でした。そのせいでボケボケだったのかなあ。
「そういうときはどうするの?」
「出るまでなんべんもやり直しや」
商業印刷は色校(色校正。印刷にかかる前に、試し刷りをしたもの)を出して、手順をちゃんと踏むからねえ。絵はがきでそれをやったら何万、何十万かかるわ…。

さらに彼女はオソロシイ話を続けました。
印刷とは天地自然に在る無限の色を使って描いた原画を、たった四色のインキ(もっと使うこともあります)で再現しようとする「試み」ですが、印刷所には「オペレーター」という人たちがいて、その人たちが四色インキを使って原画を再現するためにちょっと青インキを減らしてみようとか、赤インキを増やしてみようとか、量を加減するらしい。
彼らは自分たちの「カン」と「美的センス」で機械を操作する誇り高き「職人」です。
「塩加減」に命をかける料亭の板前さんのようなものですね(^^;)。

数年前、最新式のコンピュータ制御の印刷機械が工場に入ったとき、その人たちはコンピュータを操作して原画に近い複製を再現する方法を新たに習わねばならなくなったが、なにせ今は年賀ハガキも名刺もみんなパソコンで自分で作っちゃう時代で、印刷業界も大不況で、人件費削減をはからねばならない。これからはぜんぶ機械がやってくれるからね、と彼らばっさりリストラされたそうなのです。

「それでどうなったの?」
「品質低下で、山のようにクライアントから文句がきて、今アート・ディレクター養成の部屋を作って必死で教えとる。アホちゃうかー」

「美学」を持つコンピューターはまだ発明されていないらしい…。

リストラされたそのオペレーターさんがパソコン教室に通ったのち、再就職した印刷所があれば、印刷がいいかもしれないな。
そういう印刷所が見つかるまでは、ボードか紙に絵の具で描いたアナログ入稿の方が安全なのかもしれない…。

「出来をあれこれ考えても仕方ないとちゃいますか〜? それよりクライアントの束縛受けずに自分のやりたいことやったらどおです、センセ?」
関西女は時速160キロの直球を投げてくる。だから、好き。ついでにたいがいの漫画家は「先生」と呼ばれるのがキライで、私もその一人だが、彼女に「センセ」と呼ばれるとおちょくられているとしか思えなくて、とっても快感。

でもね。やりたいことをやる、というのはファイン・アートの考え方だと思うの。
私はアルチスト(芸術家)よりアルチザン(職人)になりたい人間なので、依頼された仕事ではできる限りいい仕事をしたいと思うけど、自分でやるときは「お客さま」(クライアントではない)のことを考えてしまう。キレイで原画に忠実な「複製」を仕上げることで、より多くのお客さまに喜んでもらうのが「職人道」だと漫画家歴数十年でイヤというほど見てきました。
漫画は一人で描くものだけど、本を作るのは一人ではできないからムツカシイ。と、考えてばかりいると何もできないで時間ばかりがたってしまうから、いけない、いけない。

 

 

2002/4/4(木)『花に嵐の金沢情報』

むかし「花ニ嵐ノタトエモアルゾ サヨナラダケガ人生ダ」という歌をよんだ詩人がいましたが、ただ今金沢は、桜が満開になりかけたところに強風と悪天候が襲いかかり、われわれ金沢人と春休みを利用して来沢された大勢の観光客のみなさまが(ねえ〜、ちょっと来すぎだよ〜。そんなに「利家とまつ」って面白い?)はたして満開の桜を目にすることができるのか、あるいはこの風と雨のために咲く間も待たずしてあのピンクの繊細な花が散り果てるのか、一刻の予断も許さないガケップチにあります。

こちらでは今都市ガスを天然ガスに切り換える工事が行われているんですが、 日本のお役所って優秀ですねえ!
切り換えのお知らせが一年くらい前から来てて、あなたのウチは何月何日に切り換えしますからその日きっとウチにいて下さいね!天然ガスに切り換えたあとに整備してないコンロを使うと大変なことになりますから!ってそれはもう何度も何度も確認して、約束通りの日にちゃんと来て「明日までこれを使って下さい」とガスボンベ用コンロと予備ボンベ一個を置いてって、ま、この料金も市民税だろうが。

だらしがなかったのは私の方です。
天然ガスに取り替えるために、一日ガスコンロと湯沸かし器が使えなくなったんですが、お風呂は我慢しても、食器が洗えない…!春とはいえまだまだ水は冷たいので、5分も流水に手をさらしていると痛くって、ええい、明日までほっとこう!と流し場が山盛り…。
たしか湯沸かし器が出てきたのってほんの二、三十年前で、それまでずっとおかあさんは水で洗い物してて、 私だって大学時代は下宿には湯沸かし器がなくて、入れたのはずいぶんあとのような気がする。ついこないだまで夏であろうと冬だろうと水で洗うのが当然だったのに、それどころか洗濯機がないときはタライに洗濯板で洗ってたのに…私たち、もう食器を水では洗えない体なんですね…。

1月に近所の商店街がリストラされちゃった〜という話をしたのをご記憶の方もあると思いますが、そこに西武資本が入ったそうで(ここ確かそごうの再建もやってるね)、小さい商店をぜんぶ潰してべったりサラ地にしたあとに、先日「MUJI」の北陸地方最大店舗が開店しました。
その横はずっと空いてて工事中だったんですが、先日横を通りかかったら「スターバックス・コーヒー」のあの丸いグリーンの看板が下げられているのを見て、うきゃうきゃうきゃあ。
香林坊とここと、あと金沢駅に「スタバ」三店が一挙にオープンするそうです。
いよいよ金沢がシナモン臭くなるぞ〜(笑)。
それに加えて「コムサ・イズム」も入るそうですが…。
小さく区切られた店舗を借りるテナントが無くなって、空き店舗が目立つようになったところをサラ地にして、大きなブランドを入れて広い面積をゆったり埋めるって計画らしいんですが、 あの「MUJI」はタナとタナの間が遠すぎてゆったりしすぎです(笑)。タナの間を狭めて、噴水とか仏像とか(冗談です)ヘンな空間を作って、買い物に行くというより、そこに行くとなんだか楽しくてしょうがないという「広場」を作って、そこにいつのまにか人が集まって、その結果買い物客も増えるという場所を作るってアイデアはダメなのかなー。

そのためには「MUJI」より「ロフト」の方がよかったのにねー。
と近所のお姉さんと話してたら、もうじき向かいの「ダイエー」が潰れるから(いや、えっと、ここ潰れると近所にスーパーが無くなって、コンビニしかなくなって困るんですが)、あそこに「東急ハンズ」に入ってもらいましょう。おお、それ、グッド・アイデア!ついでに「MUJI」も追い出して、かわりに「ロフト」に入ってもらいましょう!と二人で踊ってしまいました。

いいですねえ、近所に東急ハンズと西武ロフト。うっとり。
一度入ったら二度と出られない永遠の迷宮。ヒマつぶしのクノッソス宮殿。
でも人口が100万以上ないとハンズやロフトは支えられないだろうなあ。

ハンズやロフトのウリは「必要じゃない」ものを売ってるってとこで(もちろん旅行用品や日曜大工用具や食器や文房具など必要なものを売ってるからみんなあそこに買い物に行くんですが)役に立たないけど面白いものをそこで発見するのがすっごく楽しい「冒険」だから行くんですよね。岩石見本やビーズ細工や、えーっと、これは私のシュミ(笑)。
そういう無駄な商品在庫を支えるためには、生きてくために必要なムダを商売にする人たち(デザイナーとか、広告代理業とか、ジャーナリストとか、漫画家とか(^^;)が周辺にいることが必要で、そういう余裕って人口100万以上の都市じゃないと支えられないんですよね。
人口40万の金沢は、実用品のカーマ・ホームセンターで我慢するしかないのか…。