200112月の トンテンカン劇場

 

2001/12/26(水)『クリスマス・プレゼントに』

HMVから荷物が届いて、中にはサヴァールのモンテヴェルディ「聖母マリアの夕べの祈り」とマレの「ヴィオール曲集」が入っていました。

注文したのは数ヶ月前で、在庫無し、入荷時期未定、というメールをもらっていたので、中古探さなきゃなあと思っていたので、ちょっと狂喜乱舞。 ヨーロッパから貨物が届いたんだろうか。それとも新しくプレスしたんだろうか。とにかく、手に入った〜!

「聖母マリアの夕べの祈り」は…やっぱり私、この時代の宗教的声楽曲は苦手みたい(笑)。合唱曲では踊れないものね。
マレの「ヴィオール曲集」はCD5枚あって、75〜92年まで一枚ずつ、17年かけて録音してます。考えてみると、私がこれまで聴いていたサヴァールのCDは最近のものばかりで、昔の彼の演奏を聴くのは初めてだったかもしれません。

マレというのは18世紀のフランスの有名なヴィオラ・ダ・ガンバの奏者で作曲家で、サヴァールもヴィオラ・ダ・ガンバ奏者だから、その曲を演奏したというので評価を受けたんだけれど、その演奏は「端正」で「正確」で、とくに初期の頃は「学者」が演奏してるしてるみたいに「おカタい」CDで、ちょっとびっくり。

この人、最近変わったんだなあ…。

80年代の終わりからクラシックにとらわれない音楽を追究するようになったらしい。円熟というより、変質に近いような気がする。活躍の場をスイスからバルセロナに移したことで、軸足も「ヨーロッパ」から「地中海」に移したんだろうか…などと考える。
最新の録音の5枚目と、「ラ・フォリア」が入ってる2枚目を繰り返し聴いています。

その次の日、熊本から焼酎「霧島」の一升びんがでん!と届いた。

10月に熊本に旅行したとき、アルファ・システムというゲーム会社の方とお酒を飲む機会があった。
最近あちこちで話題になって、コミケでも人気の「ガンパレード・マーチ」というゲームを作った会社で、本拠は熊本、全国CMをせずにクチコミだけで大ヒットしたという、やるのも面白いけど、その発生も面白いというゲームです(笑)。

「味のれん」というお店で、桜納豆やいも焼きや馬刺やアップルパイ等々、熊本の美味しいものを山ほど食べながら、こちらも弱い方じゃないけど、ビールと日本酒と焼酎を浴びるほど飲んだあと、「新ゲームの開発で、今夜も徹夜で〜す」と帰っていく彼らの後ろ姿を見送って、九州男の酒の強さは尋常じゃない…。

「25度の焼酎「霧島」は日本中で売ってるけど、20度の「霧島」は地元でしか手に入らないんですよ」
25度だとお湯割りするが、20度だとそのままストレートで飲める。
「焼酎は割らないほうが口当たりが柔らかで、本来の味が残るんです」と勧められ、美味しい、美味しいと飲んでると、じゃあ送りましょう、という約束通り、お歳暮に送って下さったのだ。

お返しに「手取川」の「吉田蔵 大吟醸」を送った。
これは今年の石川の地酒の中で一番美味しい!、と思う。

石川の地酒ナンバーワンは「菊姫」だが、「手取川」もひいきの酒蔵だ。
息子さんが杜氏として新しく作り始めた酒を「吉田蔵」というブランド名で売り出して、まだ新人だからということなのか、大吟醸なのに安い。
おまけに旨い。とくれば。
将来有望な跡取りができて、よかったですね〜。ごくごく。
でも有名になったら、値段も上がるんだろうね…。ぐすぐす。

と近所の酒屋さんの売り上げに貢献していたら、「これ、サービスです」と酒粕をもらった。
「日榮」というメーカーのもので、なかなか美味しい。
このごろ味噌汁に酒粕をちょっと混ぜて、毎晩味噌粕汁を作って飲んでます。

 

2001/12/18(火)『さいきんどうも音楽に取りつかれているようだ』

今、缶コーヒーの『Fire』のCMが気に入っている。
なんとかビデオに撮りたいと思っているが、いつ放送するのかわからないので、いまだに果たせない。

ポータブルプレイヤーのレコードが流れる中、キムタクが帰ってきた猫を肩にのせ、トランクを下げて部屋を出ていく、あのCMです。

演出がしゃれているし、キムタクはカッコよくて、ニューヨーク風の部屋もステキ。おまけにネコがかわいい!
コントラストのきつい画面が映画みたいで、ドラマチックで、なにがあったのかしら。これからどこへ行くのかしら、と見終わったあと、しばらく余韻にひたってしまう。

このCMディレクターのすごいところは、ドーナッツ盤から流れる50年代風のノスタルジックなボーカルを「レコードの音」で再生してるところです。
たぶんレコードをそのままかけているのではなく、作為的に作り出している。
ちょっとひび割れた、低くて、こちらに迫ってくるリアルな声。
あれが「レコードの音」なんです!

LINNのCDプレイヤーのおかげで安らかに音楽を聴けるようになった私だが、レコード・プレイヤーもよくかける。

レコードを聴いていると、音が地を這ってこちらに届くことに、最近気がついた。
一方CDの音は、左右のスピーカーから出た音が三角形の頂点で出会ったところで、空中にほわあ〜とホログラムを作る。
そう思いませんか?私だけかな。

たしかに音はいいし、情報量も多い。
でも地面を這ってこちらに届いて、体をグイグイと揺らせる「現実感」が、空中ホログラムのCDの音には欠けているような気がして、その「現実感」が好きで、私はレコードの方が好きなのかもしれないな、と思う。

前にも書きましたが、むかしバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」を聴きながら、「花月物語」という室町時代を背景にした漫画を描いたことがある。
20年前のARCHIF録音、日本ポリドール発売のヘンリク・シェリングの「無伴奏」は音楽史上に燦然ときらめく「名盤」で、しかも名人が名曲を演奏するのを当時のクラシック技術界が総力を挙げて応援するぞ!って気合いが感じられる、とても録音状態のよいレコードだ。

この「無伴奏」を聴いていると、狩衣を着た稚児が桜の舞い散る下でくるくる舞っている情景が目に浮かんだ。
狩衣のすそが空中を舞って地面に触れるシャッ、シャッという衣ずれの音が聞こえた。
私の耳にはリアルに聞こえたのだ。

ソナタは違うけど、パルティータはもともと踊りのための音楽形式で、サラバンド、ジーグ、メヌエット、パヴァーヌなどと同じ。ダンスにはヴァイオリンやギターなど弦楽器の伴奏がつきものなので、舞曲から発達した器楽曲は多いらしい。とすると、私が「無伴奏」を聴いて「踊る稚児」を想像したのも的はずれではない…?

でも、シェリングの「無伴奏」を、足が地に着かない、空中に描かれたあやうい楼閣のようなCDの音で聴いたら、はたして私の耳に衣ずれの音が聞こえただろうか…?

もちろんそれを確かめるために、シェリングの「無伴奏」CDを数千円払って新たに買うほど、私はもの好きじゃない。
しかし、 数十年に渡る人工音楽鑑賞歴をもとに、あえて言おう。

ポータブルレコーダーの上の45回転ドーナッツ盤レコードが、ちょっとひび割れた低い地を這うような「レコードの音」で歌ったからこそ、見るものは「え、なに?」と画面に引き込まれ、キムタクの後ろ姿を見送って、彼にいったいなにがあったんだろうと思い、これからどこへ行くんだろう…と心に余韻を残す名作CMになったのだ!と。

(付記)このCM監督は行定勲さんといって、私はまだ見てないんですが、窪塚洋介さんとか出て話題になった映画「GO!」の監督さんだとか。こりゃ見るしきゃあないね。

 

2001/12/16(日)『ダンスとサヴァール』

12月に入ってから、金沢には冬が到来しました。
いやはや、毎日夜も昼も真っ暗です…。

『JUNE 』にH・アール・カオスの「ロミオとジュリエット」の観劇記を描いたんですが、H・アール・カオスはダンス・カンパニーなので、踊る人間を描いたんですが、これで二つのことが分かりました。

ひとつめ。私は人間の体の動きが好きなんだなあ。

ネタになる写真がないと描けないんですが(資料がなくても描ける人もいるのだ(^^;)、ダンスとかサッカーとか太極拳とか、人間が体を動かして、それが美しい動きをするのを、見るのも、するのも、描くのも、大好きみたい。

よろしかったら私の描いたダンス、見てください。
2pなので、買って下さいとはとても言えません(笑)。
来年の一月発売だと思うんですが、分かったらまたアナウンスします。

もう一つ分かったことは、人間てしめ切りがないとなんにもしないんだなあ…。
風邪をひいてようと、熱が38度あろうと、腰が痛かろうと、しめ切りですって脅されると、机の前に座って原稿を描くんですよね…。
我ながら感動しました(笑)。

ところで、サヴァールというのはスペインのカタルーニャ地方(バルセロナとかあるところ)生まれの古楽奏者のヒゲのおっちゃんですが(ウェーブした黒髪と知的なまなざしが、なかなか男前だと思ってる)、バッハ以前の中世、ルネサンス音楽の愛好者には熱烈なファンが多い。
「ジョルディ・サヴァールとエスペリオンHESPERION XXI」というと、「おお、あの…!」という反応が返ってくるくらい、一部では人気があります。
でもふつうのレコード屋さんに彼のCDは置いてありません。
近所のレコード屋さんで「サヴァール、ありませんか?」と聞いたら、「おお、あの!」と店員さんは一歩引いて、「取り寄せになりますが」って言った。なんですか、このリアクション。あなたもファンなんでしょ(笑)。

フランスのASTREEというレーベルと(中世、ルネサンスの音楽を多く出していて、その筋の人はよくお世話になってる)、ALIAVOXという彼の個人レーベルから彼のCDは出ているんですが、どうもこの二つと契約してるレコード会社が日本には無いみたい。
だから日本盤が出ないし、宣伝もセールスもしないし、お店にも置いてない。
グラモフォン、アルキーフ、東芝EMI、カラヤンで売ったソニー・ミュージック・エンターティメント、エトセトラ。ポピュラー音楽ほどではないにしても、クラシック界も名門メジャーの権威に左右される「音楽産業」なんだなあと、あらためて実感。

ソニーあたりがサヴァールと契約したら、きっと来日公演をさせて、雑誌や新聞で大々的に騒ぎたてるプロジェクト(X?)を組んで、彼のレコードが店頭に平積みされて、コーナーができるかもしれない(笑)。
必殺技は「違いがわかる男のコーヒー」かウィスキーのCMに出ること。これで、きまり。
やりませんか、ソニーさん!?(やりそうでじつはコワイ(^^;)。

でもま、輸入盤を置いてるレコード屋さんはいっぱいあるし、なにより今はインターネットがありますから、今のところとくに不自由は感じていません。

ASTREEとALIAVOXのCDは、ジャケットがとってもキレイなんですよ〜!
どちらもプラスチックケースに入ってないマット加工のブックレット型で、表紙に泰西名画を使って、デザインが凝っていて、私たちはこういうレーベルなんですよってジャケットから伝わってくるところが、芸が細かい!
しかし解説は読めません(笑)。

 

2001/12/7(金)『来年の6月、私はなにをしているのだろう』

12月1日に2002年のサッカーW杯の対戦表が決まりました。
日本は予選リーグで、ベルギー、ロシア、チュニジアと戦うことになりました。

トルシエ・ジャパン、どこまでいけるのか、よく分かりません…ワタクシ。

中田、小野、稲本、本山、ずっと追いかけてきて、試合ごとにやれ〜、そこだ〜、いけ〜っ!て声援して、ぞっこんになっちゃう選手がこんなにいるのに、ときどきフッとほころびがでて、モロイ負け方しちゃうチームです。

その負け方が、海外でドン!とぶつかって、ええ、そうよ、ワタクシってとっても弱い日本人なのよ〜っ!!!と落ちこむカンジとそっくりで、かつてのオフト・ジャパンもすご〜くいいチームでしたが、93年にドーハでイラクに負けた試合で(じっさいは引き分けでアメリカへ行けなかった)、日本=サッカー=ダメだ〜=ワタシ、というわけのわからない方程式の結果、肺炎を自発して、一ヶ月入院するハメになりました。

98年のフランスW杯は、日本が出場したから大変だったでしょう?
と問われれば、その前に何度か試合を見ていて、このチームは守備と攻撃が繋がってないから勝てないと思ってたので(ナントカしてくれって前に放りだされて、一人で駆けまわってた中田くん、ホントかわいそうだった。あげくにクロアチア戦で戦犯の烙印押されて、あのあとイタリア行ってよかった。よかった。日本にいたら潰されてたよ)、負けようが点を取れなかろうが、なんの感慨もありませんでした。

つまり、今回日本が勝つと期待すると、またワタクシは入院する可能性があるわけです(笑)。

98年と違って、トルシエ・ジャパンは「強いチーム」だと信頼してますが、93年のドーハで学んだことは、日本を負かすのは他チームではなく、日本チーム自身だということです。裏切り者は日本人である彼らであり、私自身でした。

11月のイタリア代表との戦いを見た限りでは、海外チームで活躍する選手が増えたせいか、向かっていく気力では負けていませんでした。
いけるかな、これは…って思ったけど、時差ボケのイタリア相手に、ペース・ダウンする試合計算もできないとは…なあ(かりかり)。

ベルギーもロシアもチュニジアも、日本より弱い相手ではありません。
予選リーグの三試合を全力で戦ったら、決勝リーグに進出できたとしても、体力使い果たしてボロ負けするにきまってる。
今からその計算ができなくて、本戦で計算できるのかい…?

ところでチュニジアといえば、思い出すのは98年パリで、日本×アルゼンチン戦の前に、昼食を食べたお店のチュニジア人のオヤジさんに、「このクスクスをぜんぶ食べたら、日本はきっと勝つ!チュニジアもイングランドに明日勝つ! 」(私が食べ残したせいじゃないと思うけど、両方とも負けた)と言われたこと。なんだか懐かしいなあ。
あのオジサン、来年のチュニジア戦の前には「くたばれ、日本〜!」て叫ぶんだろうなあ(笑)。

6月のチケット販売は外れて、12月の二次販売に賭けようと思ってたら、枚数が8万枚と聞いて、さっさと諦めました。
でも応募数が70万枚と聞いて、チョット後悔してます。
出せば当たったかも、ね。

チケットを手に入れた人は、ホントうらやましいです。
でも、試合が地元で行われる人はもっとうらやましいです。
(ついでに、キャンプ地になった人も)
来年の6月、わけのわからないお祭り気分が町全体を包んで、ウキウキドキドキするあの空気を吸うことができるんですね。
旅人にも、隣りの人にも、笑いかけて、同じ時間を過ごすことで、フワァーと地平線が広がって、ギュギューと興奮を味わう、またとない機会を味わえるんですね。
思い切り、胸いっぱい、その空気を吸い込んで、楽しんでくださいね。

アタシは空からチケットが降ってこないかなあと思いながら、ときどきカップヌードルを買ったり、東京火災海上に入ろうかなあと考えたりして、たぶんTV観戦します(涙)。