200010月の トンテンカン劇場

 


2000/10/10(火)『カラーページができるまで 改悛編』

ぶわっはっは〜っ。やってしまいました〜っ!!!どんどんどん。
カラーページの印刷です。(やっと本誌を見た)
あのようなものをみなさまのお目に入れてしまうなんて、本当に申し訳ないことをしました。ごめんなさい〜。

ぶわっは、なんであんなに主線がふくれるんでしょう?
どこかでミスをしています。
連休が明け次第、編集部に聞いてみるつもりですが。
カラー4P目はトンボが外れて、版面(はんづらと読む。コマ枠の指定をする画面)が私の指定とズレていました。
( あのページはお花以外はぜんぶコマ枠内に収まるはずだったんです)
「PageMaker」「QuarkExpress」「Illustrater」とかのソフトに入れて送ってれば、たぶんこういう間違いはしない。でもそれデジタルDTPの頂点です。

技術を知らない作家と、CGを知らない編集と、漫画を知らない印刷所がタッグを組むと、こういうデス・マッチをやります。そういうトラブルが面倒だからと、自分のプリンタで印刷したものを原稿として出すという漫画家さんも多いんです。

でも悔しいな。すっごく悔しい。
ミスをこのままにしてやっぱり手で描こうと思ったら進歩がなくなるので、リベンジしてやる〜!!!と、当分CGにチャレンジし続けることを決意しました(笑)。
といっても、今描いている次号「トムプラス」の表紙は、さすがに怖いので、アナログで描いてるし、そのあとは当分カラーページはないでしょうけど。

思えば、今までにいろんな画材を使ってきました。
水彩絵の具、日本画絵の具、カラーインク、パステル、色鉛筆 、リキテックス。油絵だけはやったことがない。
なんでこんなにいろんな画材に手を出したかというと、使いやすさと使いにくさがそれぞれにあるのです。

印刷用インクの成分と同じだとかで、カラーインクで描いた絵がいちばん発色がよくて、ゲンコーそのままに印刷されてとってもキレイです。ところがカラーインクというのは化学合成物質なので、塗り重ねると化学変化を起こしたりして(リトマス試験紙みたいにパアーッと色が変わる)じつは私はこれを使うのがすごく苦手でした。
さらにキレイで透明な色であるぶん、くすんで濁った色が好きな根性曲がりの私としては、岩絵の具である日本画顔料を混ぜたりして、どうやって彩度を落とすか、濁らせるかにばかり苦心して、カラーインクのイノチであるその色と透明度自体が、どうにも私には使いにくい素材でした。

おなじ透明でも、水彩は塗り重ねても化学変化は起こさないんですが、発色が地味な上に、塗ったあと色が退色するんです。あれ、紙が吸い込むのかな? 描いて、翌朝見ると、えっ、私こんな地味な絵描いてないよ〜てくらい色が変わってる。印刷するとますます地味で控えめで奥ゆかしい画面になります。これを発明して、風景画ばかり描いていたイギリス人の国民性でしょうか(笑)。
カラーインクはアメリカの広告業界の発明品だと思います。

私がいちばん好きなのはリキテックスです。
これはアクリル絵の具といって、塗り重ねると油絵ふうにすることができます。「南京路に花吹雪」の後半で闇に佇む黄子満とか描いたり、「ジークフリート」でもこれを使っています。
でもカラーインクに比べると色が地味で、印刷で出にくい。原画とぜんぜん違う印刷になるのです。美術館で絵を見て、画集で見てたのと違うじゃない!と驚いたことはありませんか?ああいう感じ。

ちなみに印刷で再現しにくい画家ナンバーワンにはモネを推します。ゴッホなんて複製しやすい方。伝わってくる迫力はすごいけど。
ワラ小屋とか、光りの変わり方とか、睡蓮の乱舞するさまとか、モネの積み重ねた油絵の具は、写真にはなぜか写らないんです。
写真にしやすい画家ナンバーワンはクリムトかなぁ(笑)。原画を見て、これポスターじゃないの〜?と思った。

なんでリキテックスが好きかというと、光線を描けるからかもしれないなあとぼんやり思います。光が当たるから影や闇ができる。カラーインクは色はキレイだけど、影とか闇とかが描けません。カラーインクで描いた光線はディスコのカクテル光線になります。(それも好きだけど)

そういえばモネは光線を描くのがうまい画家だけれど、影とか闇とか描くのがうまいのはレンブラント、モローだな。そして二人ともデコラティブ。どちらも私は大好き。
う〜ん、ほとんど趣味がワンパだ、私。

CGにひかれるのは、光が描けるってところかもしれません。
モニタはRGB、印刷はCMYKといって、媒体によって色を分解してそれを再構成するカラー・モデリング・システムが違うんですが、モニタの色の色域の方が広くて透明らしいです。詳しいことは分からないけど、例えばモネが絵を描くとき使う絵の具は化学物質もあるけど、緑青(ろくしょう)のブルーとか自然の中にある色もたくさん使って、それをキャンバスの上に乗せる。それをカメラで撮る時、機械を通して記号に置き換えて、カメラに記録されたその記号を、印画紙の上に、その記号を使って翻訳して再現するわけです。
ってこの辺の話をすると、アッツジェなどの今世紀初めのパリを撮った写真家のことを思い出してしまうんですが。
アッツジェというのは写真創生期にカメラに取り憑かれて、自分の住む町の裏町や家の写真を撮り続けたパリの写真屋さんです。近年評価が高まり、フランスでも日本でも写真集がたくさん出ています。私が知ったのは「シメール」の資料でパリの写真を探していた時。
技術の進んだ今の写真より、百年前の彼の撮った写真の方が、パリの空気と時間をより多く記録しているように思えるのはなぜだろう?(露出時間が長いから?)
技術の発達から取り残されて消えていったものを追いたい人間なのですが、私は、本来。

グラフィックソフトを使ってモニタであれこれいじってると、とても私好みの陰影のある画像ができて、スキャンした古い画像もモニタに乗せると、原画より美しくなります。

そういう媒体が育てたソフトだからかな。「Photoshop」「Painter」およびそれに入れて使うフィルターは、バーチャルで光線のコントロールをやる機能がすごく発達しているような気がします。ドロップシャドウだのベベルだの、デコとボコがやたら好きで、なんでデコボコさせるかっていうと陰影を付けるのが好きだからで、「照明効果」なんてフィルターがどうどうと大きな顔している。
これらのソフトのやってることはすべて光線を変形して、光の当て方でモノはこんなふうに違って見えますよってシミュレーションですよね。

それをうまく利用して、写し変えれば、光線感応度がビンビンきいた光と影のイラストが、印刷でもできるはず…と考えていたんですが。もともと「Photoshop」は印刷広告用として誕生したソフトだから不可能ではないはず。
でもそのためには私はまだまだ勉強不足だし、広告業界と漫画印刷は違うし、機械のことを知らないと、機械に足を取られて終わるということを今回のことで知りました。

デジタル・ペインティングはむつかしいね。いろんな意味で。
でも諦めないよ。だって好きなんだも〜ん。

 

2000/10/5(木)『カラーページができるまで』

今回カラー4pを初めてパソコンで描きました。

といっても漫画の場合は主線をタブレットで描くのは不可能だし、私の絵ではどうしても下塗りしてからパソコンで効果をかけるという折衷的な描き方になるんですが。
それでも一応MOで漫画の原稿を渡したのは初めてです。

パソコンで絵を描くことに関しては、けっこう編集さんでも拒否反応を示す方が多いようです。
この、編集さん「でも」という接尾詞の使い方はなんでしょう。たぶん編集さんでもイヤがるんだから、読者ならなおさら…て記号的了解?(笑)。
なんでパソコンで描くんでしょう、手で描いた方がぜったいキレイなのに、高いお金出して買ったからみなさん使ってみたいんですね、などとけっこうイタイところを突いて下さいます(笑)。

いわゆるCGで描いた、と一目で分かる絵は「Photoshop」で描いた絵が多いようで、 アレは「塗り」にクセがあるので、というか、一種類の「塗り」しか出来ないので(バケツ塗りをするのでなければ、エアブラシしか使えないと思う)、肌の塗り方とかに、あ、これは「Photoshop」だなと特徴が出る。 しかたない。もともと写真のレタッチソフトだから。「絵を描く」ようには出来ていない。
「Painter」を使うようになって、いろんな塗り方が出来るし、いろんな絵が描けるので驚いた。これだと手塗りかCGか分からない。「Painter」は絵の具をヴァーチャルで再現するソフトなのだ。
漫画家でも「Photoshop」と「Painter」を併用する人が多い。

デジタル・ペインティングの長所は、
1.手塗りより早い
2.手塗りでは描けないものが描ける
3.失敗してもundo(やり直し)がきく(手塗りだと下絵を描くところからやり直し。泣きます)

短所は
1.undo(やり直し)がきく分、線に緊張感が欠ける(つまり一期一会の線が描けない)
2.よく似た絵になる
てなところがみなさん口にする公約数的意見かな。

CGに何が出来るか、何に向いているか、私にはまだよく分からないし、これからずっとパソコンを使うと決めてるわけでもない。
今回はホントは締め切りを遅らせて時間が無かったし、まだ使い方もよく分かってないから使うのはヤバイなと思ったが(失敗したときやり直す時間が無い!)、とにかく使ってみるべ〜と使ってみた。

あるデザイナーさんが言っていた。「私は新しいソフトやハード環境を手に入れた時、それでやる仕事を請け負うことにしている。仕事が終わったとき使い方をマスターしているから。」
そう、 あなたは正しい。

たとえばですね。
「画像をクローン化して、すべてを選択し、画像を消去したのち、トレーシングペーパーを使って元絵を参照しながら絵を描く」
この意味分かる人いますか???
とにかくガイドブックのセリフがまったく分からない。立ち上げて実際さわってみると、ものすごい量のウィンドウがドッと出て、それがなんの役割をするのか分からない。途方に暮れて立ちつくす。「Photoshoper」の悲しいサガで「Photoshop」と同じ操作をする。ますますこんがらがってワケが分からなくなる。だめだこりゃと「保存しない」をプッシュして消すという空しい作業をずっと繰り返していた。
このように「Painter」というのはみんな口をそろえて「とっつきが悪い」というワケのワカランソフトなんです。

ところが「MACLIFE」のお仕事をいただくようになって、「Painter」を使って絵を描かなきゃならない状態に追い込まれた。描かなきゃ、でも描けない、逃げようと後ろを振り向くと、締め切りがそこに…!
描かなきゃ〜っ!!!

とフライパンの上の猫のようにそこいらじゅうをクリックしまくってたら、あ〜らフシギ、クローンが出来ました。どこからともなくトレーシングペーパーが現れました。絵が描けました。
神は苦しむものだけに救いの手をさしのべてくれるのです。

知人に一人の漫画家でイラストレーターがいます。
出たばかりのG3を一台目に買った。それにメモリをつめ込んでつめ込んでつめ込んであっという間に1GB(!)にした。ハードディスクも付けた。外付けも買った(今合計3,40GBだと思う)。周辺機器もバンバン買った。そしていつも「お金が無い〜、お仕事ちょうだい〜」と叫んで、ものすごい勢いで仕事をしている。そして稼いだお金でまた機器を買っている。こういう人は上達が早い。2年くらいで練達のMac使いになっている。

こんなバイタリティはとても私には無いが、とにかく使ってみないと何が出来るか分からないので、今回はパソコンを使ってカラーを描いてみた。自信が無いとか、クオリティが落ちるとかためらっていると、新しいことを覚えるチャンスを失うから、使ってみた。という次第。
出来については雑誌を見てみないと分からない。時間も無かったしウデも未熟だからきっとヒドイと思う。でも今回はオリンピック。参加することに意義がある。ちょっと違う気もするが。これからのことは見てから考えようと思っている。

ところで、描き終えてMOに入れて送ったあと、原稿がこの世に存在しないことに気がついた。0101の記号でMOに入っている。私のパソコンのハードディスクにも入っている。印刷所でパソコン処理されて、機械を通って印刷される。でも絵としては「存在しない」。
はあ面白いと思いつつ、どこか心もとない感じもした。
イラストボードに描いた絵は変色・劣化するけど、MOも劣化するのかな。手元にパソコンが無かったら、自分が描いた絵を自分で見ることもできない。心細いな。でも漫画はしょせん複製文化だけど。原画展に絵を貸してくださいと言われても、貸せないんだな。
う〜ん。これがデジタル・ペインティングなのか。
これからどうしようかな…。

表紙だけだったらもっと楽だったろう。コマ割りしたページもあって、これはちょっとやりにくかった。CGは、というか「Painter」はかな、オブジェクトとして中心がはっきりしたものを描くのにはすごい威力を発揮するような気がする。コントラストの強い絵になるぶん存在感が出る。でもいろんなものを一枚にまとめるのはムツカシイっていうか…でもこれは個人差もあるからよく分からない。

デジタル・ペインティングの長所その2に限りなく心ひかれてる者としては(今回その1もちょっと入っていたが)、「Painter」や「Photoshop」をもっと勉強して使えるようになりたいし、それで何ができるか知りたいし、いろんな世界を作っていけたらいいな〜と思いながら、ポチッと一歩踏み出してみました、ってところです。

といいつつ、実は今回のことでちょっと落ち込んでいる。
これまで描いてきた絵は、Webページ用イラストだと解像度が72dpiだった。おそれ多くもかしこくも身の程知らずにも描かせていただいている「MACLIFE」のお仕事は10×7センチくらいのイラストだ。

今回は見開きB3サイズの大きな原稿を300dpiの解像度でスキャンして仕事をした。
…「Photoshop」が動かなかった。

いやフリーズはしないですんだんだけど、セーブするのにいちいち数十秒かかった。大きなブラシだとカーソルと色の動きがズレた。書き直しを何枚かためるとハードディスク不足まで出ちゃった…
これが噂に聞いてたグラフィックはとにかく重い。ってヤツの実体かあと、ディスプレイの前でダ〜ラダラ冷や汗を流しながら作業した。ものすごいストレスだった。

もちろんいろんな環境でグラフィックやってる方はいるわけですが、私はG4を買ってからトラブルは起こさないは。「Photoshop」も「Painter」も最新バージョンでスイスイ動くは。ソフトの同時立ち上げは無限にできるは。なーんていい子なんでしょってカンドーしていて、3Dやムービーをやりたいなんて野心を起こさない限り、このG4は文句一ついわないで私のいうことを聞いてくれる万能のパートナーだと信じてたんです。少なくとも二、三年は。
ああ、もう裏切るのね、おまえ…と傷ついてしまった私は、しょせんアマチュアだったのね。

400Mhz、HD10GB、メモリ320MBなんてグラフィッカーにはビンボーだという冷厳な現実を知った私は、「Photoshop」も「Painter」にもメモリ割り当てを増やし、同時立ち上げをしないようにし、余分な画像はMOに保存して外に出し、なんか一晩で総白髪のやりくりバーサンになってしまったような気がしてます。おっと。こめかみに梅干し。あんたぁしっかりしとくれよ。今ここでくたばられたらあたしゃどーしていーかわかんないよ〜ぜいぜい。

しかし。2Dグラフィックでこんなに不自由するとは、3Dやムービー、「After Effect」や「LiveMotion」なんてソフトを動かすにはどのくらいパワーが必要なんだろうとちょっと試してみたい気も起きてしまった。

なんてバカなこと考えてないで、そろそろメモリ追加を真剣に考えようかねえ、よっこらしょっ。