最近気に入って、よく聴いているヘビー・ローテーションのCD、二枚!!!

 


『LIVE IN JAPAN』DOUBLE FAMOUS
featuring 畠山美由紀、Leyona、中納良恵

録音2003年

Speedstar VICL-61199


タワー・レコードの大推薦アルバム。
なにせフライヤーの「BOUNCE」の新譜紹介で1p使って宣伝して、SHOPにコーナーを作って行商していた(笑)。

DOUBLE FAMOUS ダブル・フェイマスというのは、ひーふーみー、今数えてみましたら9人からなる楽団で、その三枚目になるこのアルバムではボーカルに畠山美由紀(今はソロだが、もとはDOUBLE FAMOUS専属歌手)、Leyona(玲葉奈、忌野清志郎のお墨付きを持つオーガニック系歌手)、中納良恵(ご存知EGO-WRAPPIN'の’よっちゃん’)の三人のゴージャスな歌姫を迎えて、ホーンやアコーディオン、ウクレレやギターやタイコで奏でる歌は、カリブ海の歌や、その島に住む人々の故郷、アフリカのリズム。
カリプソ、チャチャチャ、レゲエ、サンバ、アフリカン、夜来香。
「夜来香」は懐メロではなく、戦前の上海で中国人作曲家が作ったルンバ、かなんかよく分からない、国籍不明のラテン・リズム音楽です。
ブエナ・ビスタか上海キャバレーか、国籍不明の音楽をききながら、カクテル片手に世界酒場めぐりはいかが?七五調になっちゃったよ。

DOUBLE FAMOUSのみなさんはそもそも最初から音楽で食べていこうとは思わず、それぞれ職業を持っていて、休みに集まって練習したり、ライブをしたりしているグループだそうです。ではアマチュアかといえば、先日私がライブ・レポートをした「クレイジー・ケン・バンド」もリーダーのケンさん以外はみなさん今も職業を持っていて、スケジュールをやり繰りしながら練習とライブをしているそうで、産業としての音楽ではなく、生活から音楽を生みだそうとしているミュージシャンが、最近日本でも増えているようです。

DOUBLE FAMOUSのみなさんはカリブ海の音楽をこよなく愛しておられるようで、その音色は南向きの明るい日差しのようにの〜んびりと明るい。
聴くものをあったかくさせて、なんだか楽しくなって踊り出してしまいます。
南米やいろんな世界の音楽を奏でながら(オリジナルも)、日本人の彼らが演奏するとどこかアジア的な湿気を含むらしくて、私が持っている南米音楽やアフリカンのレコードとはちょっと違うニュアンスが滲んで、その湿り気は日本人の私にはとても心地よいものです。

CDの音も良くて、日本製の最新音楽のCDは現代技術の粋を集めて、ソリッドで電気的で人工的なカベみたいな音になることが多くて、ぶつかってド〜ン!てはね返されるってカンジなんですが、このCDの音はとても自然で、暖かくて、聴いていて疲れない。目の前でライブで聴いても、きっとこういう音なんじゃないかなあ。

今ふと思ったんですが、私がラテン音楽が好きなのは冷え症だからかしら?
南の音楽、北の音楽というのがあるとすると、私のようにトコトン冷え症の人間は、南の音楽を聴いて体を安らげたい。こういう音楽を聴くと、血管が拡がって体がホッとするんです。
体が冷えたとき、お風呂に入ろうか、このCDを聴こうか?ってカンジのCDです。
そしてこういうのを聴くと、日本の音楽の未来は明るいな〜、と思います。

タワ・レコのようにスケールと体力のある大きな店が出来ると、地方の小さなレコード屋さんはみんなきっと潰れるだろう。そう思うとあまりいい気持ちがしないけど、小さなレコード店はレコード会社がプッシュする売れセンのCDしか置かない(置けない)。
タワ・レコは、どんなに売れようとウタダやAyuやB'zのCDを平積みにしない(レコード会社との提携プロジェクトは別)。JーPOPの棚の目立つところに「頭脳警察」を置いたりする。70年前後にマニアに人気があった「早すぎた」パンク・バンドだけど、誰も知らないよね?そういうものを目に立つ棚に置いて、これはいいよ、と売ろうとする。

ウタダやAyuやB'zもいいんですが、そういうものはプッシュしなくても売れる。彼らの音楽にもの足らないお客のために、「これ面白いよ、どう?」って提案してみせる。
そうやってインディーズや埋もれていた名盤をセールスに乗せて、ここ数年で日本の音楽シーンを変えて、面白くしたのは、こういう外資系メガ・レコード店の功績だと思う。
外資系メガ・ストアは音楽のスロー・フードのチェーン店?と考えると、なんだか複雑な気分になるんですけどね。

 


『BRINGING IT ALL BACK HOME』
The Influence of Irish Music

ドーナル・ナニー、シャロン・シャノン、メアリー・ブラック、エミルー・ハリス、エルヴィス・コステロ、デ・ダナン、ジ・エッジ(U2)、アダム・クレイトン(U2)、フィリップ・シェヴロン(ポーグス)、他

録音1990年 VPCM-86008



U2ポーグスエンヤリバーダンス(アイルランドのダンスで、「タイタニック」でデカプーが足を鳴らして踊っていた。タップダンスの原型といわれる)が90年代に世界中で人気をはくして、アイルランド人がいかに音楽的才能があるか、豊かな音楽的蓄積を持っているかを証明しました。

アイルランド人は、もともと古代ローマ時代に今のフランスやイギリスにいて「ガリア人」「ケルト人」と呼ばれていた人たちで、「ゲルマン民族の大移動」で古代ローマが滅びたあと、彼らもゲルマン人と戦って負けてどんどんすみっこへ追いやられて、今はフランスではブルターニュ地方、イギリスではウェールズとスコットランドとアイルランド、スペインではガリシア地方に住んでいるそうです。

彼らは音楽的才能のみならず、感性がとても豊かな民族らしくて、「アメリカの作家はすべてアイリッシュかユダヤ人」と聞いたことがある。たしかイギリスの作家もオスカー・ワイルドやジェームス・ジョイスはアイルランド出身だし、「庭の千草」や「アニー・ローリー」や「ダニー・ボーイ」とか、日本人がイギリス民謡としてうたっている歌はみんなスコットランドかアイルランド民謡で、あのビートルズもアイルランドに面した港町のリバプール出身なんだから、きっと影響を受けたんだろうなあと考えたら、ん?ポール・マッカートニー?姓名にMcが付くのはアイリッシュじゃあないか?!
McとかO’とか付くのは「〜の息子」ということでアイリッシュの名前だそうです。だからマッカーサーもスカーレット・ハラもアイリッシュ。あのアメリカ生まれのハンバーガー屋さんもアイリッシュ移民なのか…?まるきりスコットランド民謡のような「Strawberry fields forever」を電気ギターで演奏したことは、必然だったのですねえ…。マックもオもフィッツも付いてないジョン・レノンも、なんとなくアイリッシュな顔に思えるし、ブライアン・フェリーもあのダーク・ブラウンの髪と瞳はケルト系美男だと思うんだが…。

サヴァールを聴いたことがきっかけで、私は中世、ルネサンスの古楽を熱心に聴くようになったんですが(これはいろいろなアーチストのCDを聴くということではなく、一つの曲を聴いて、これはどこから来たんだろう、どういう音楽と連関を持っているんだろう?と考えるようになった。西洋音楽を聴いて、アラブ音楽の影響を確かめることもあれば、サヴァールを聴いて、これを現代に演るとどんな演奏になるんだろう?と、ビートルズやジャズとの共通点を考えたりもする)、じつはこれまでアイリッシュ音楽には手を出さないようにしてきました。

というのは、中世のころはイスラム圏が文化的にも音楽的にも先進国で、ヨーロッパなんて野蛮人が支配する田舎というカンジだったので(^^;)、ヨーロッパ中世の音楽や吟遊詩人の歌はすべてイスラム、というかアラブ音楽の影響を強く受けていて、アイリッシュ音楽もあの二拍子でキーキーバイオリンを鳴らすところにそこはかとなくアラブの影響を感じてはいたんですが、そのあとヨーロッパの音楽が発展する影響を受けて、独自の音楽を発展させて、地中海音楽から離れたな、という印象があって、なにせ私のお金と時間はものすごく限られておりますので、今は地中海音楽に集中したい。
しかもアイリッシュ音楽は今やどこから手を付けていいのか分からないくらい、深く広く伝統音楽からロックまで広がっていて、ヘタに手を出すとどっぷりつかって抜けられなくなりそうなので、じつは私はアイリッシュ音楽がとっても好きなんですが、こっちゃうとホントにこっちゃう方なので、とにかく聴かないようにしようと思っていたのです。

ところで「トリスタンとイゾルデ」の物語の中にハープを片手に「我こそはサラセンの騎士、パーラミデュース!」と見得を切るイスラムの騎士が出てくるのですが、私はずっとイングランドだかアイルランドだかに(すいません。あのお話しがどこを舞台にしているのか、正確には知りません)、なんでサラセンの騎士が出て来るんじゃ〜?と不思議でしょうがなかったんですが、これは「トリスタンとイゾルデ」の物語が成立したころには(8〜10世紀くらいか?)、イスラム教徒がイベリア半島を支配していたので、そのサラセン帝国からドーバー海峡を渡って遍歴のイスラム騎士がやって来て、マルク王の宮廷に身を寄せて、田舎のイングランドだかアイルランドの人たちは「なんて素晴らしい音楽家なんだろう!」とびっくりして尊敬していたんだなあ、とやっと分かった時にはちょっと感動してしまいました。ほんと、サヴァールはタメになります(笑)。

このパーラミデュースくんは「どうか音楽をきかせて下され」と所望されて、「やだよ〜」とごねたあげく、「私の望むものを下さるなら」と条件を付けて、歌い終わったあと「では、王妃さまをいただきます」とイゾルデをさらって森に逃げ込んで、そのあとをトリスタンが追ってイゾルデを取り戻した…というけしからんヤツなのですが、たしかあとでトリスタンと仲直りしてお友達になった…と思う。
このように中世のアイルランドと地中海にはいろいろな人が行き来して、その距離は遠いものではなかったようです。

この二枚組のCDは、1990年に『BRINGING IT ALL BACK HOME』(すべてを故郷へ持ち帰れ)という、アイルランドの伝統音楽の再検証と、アイルランドとアメリカの音楽的ミッシング・リングを埋めることを目的としたプロジェクトが発足して、BBCで5時間のTV・ドキュメンタリーが放映されて、その音楽トラックを編集して発売されたのがこのCDなんですが、このプロジェクトによってアイルランド音楽がアメリカへ渡ってカントリー音楽やブルー・グラスになり(アメリカの人気カントリー・ミュージシャンが参加しているのはそのせい)、それがロックに姿を変えて再びアイルランドに帰って、アイルランド音楽を再活性化した経緯が証明されて、これをきっかけに90年代のアイリッシュ音楽の大躍進が始まった…と、ライナー・ノーツに書いてある(笑)。
そういうエポック・メイキングなCDらしいです。

タワー・レコードの棚に「アイリッシュ音楽入門に最適のコンピレーション・アルバム!」と、例によって店員さんの手書きのキャプション付きで並んでいて、「ま、入門ならいいか」とアイルランド音楽を封印している私もつい買っちゃったんですが、ほんとうに出来のいいコンピレーション・アルバムでびっくりしました。
なんといいますか。ロックでもクラシックでもカントリーでもフォークでもトラディショナルでもなく、ただの「音楽」なんですよ。で、歴史モノでもなく現代モノでもなく、でもアイルランド音楽の伝統と、ロックや現代音楽のカッコ良さの両方がこの中に入っているのです。
アイルランドの伝統音楽や、アメリカの古い民謡や、U2やポーグスのメンバーや、カントリー・ミュージシャンたちが伝統音楽のルールだけ決めて自由にジャム・セッションした曲とか、成り立ちがちがう曲を並べているのに、全体のトーンにデコボコ感がまったく無くて、トータル・アルバムとして完成度が高いということは、これが「伝統というものの強さ」なのでしょうか…?

アイリッシュ音楽の名盤として輸入盤でも入ってたらしいんですが、タワ・レコに並んでいたのは日本語版で、私はそれを買ったんですが、解説がとても丁寧で、訳詞をされた方が(茂木健さん)まるで「詩集」を日本語訳するように美しい日本語にしていて、輸入盤買うよりよかった!と思う。

歌詞を読んでいると、アイルランドは業が深いなあ…。
過去150年、アイルランドを出ていった人の数は国内にとどまった人の数より多い…とライナー・ノーツに書いてあるんですが、それで思い出したのはトム・クルーズとニコール・キッドマンが結婚するきっかけになった「遥かなる大地へ」。たしか19世紀半ばからアイルランドはずっと飢饉が続いて、飢え死にするよりは、と故郷を捨ててアメリカを目指す…という映画でした。「ブレイブ・ハート」でも時代は15、6世紀なのに、縄文時代か?というような泥の家にメル・ギブソンが住んでいたし、そもそも古代ローマ時代からずっとローマ人やゲルマン人などの支配を受け続けてきた民族で、今でもIRAは時々ロンドンで爆弾を爆発させるし、「イギリスはアイルランドで植民地支配の練習をした」(インドと中国を結んで阿片貿易をしたりして、植民地支配を効率的に運営した。さすがに今はやっていない)といわれるくらい、過酷な運命をずっと背負わされてきた民族です。

ほとんどの歌が、私の愛しい人はアメリカへ行ってしまった、とても寂しいとか、父と母はどうしているだろう、故郷へ帰りたいとか、別れと郷愁をうたった曲ばかりです。
そのつらさを忘れるために、彼らは酒を飲んで陽気に騒ぎます。
アイルランド人に関しては「アル中でなければ、Crazy」という言葉もどこかで聞いたんですが、これが侮蔑的言辞ならばどうか許してください。でも美味しいウィスキーはみんなMADE IN スコットランドかアイルランドですよね?
その詩的世界に、私は李白や杜甫の漢詩の世界と共通する抒情を感じました。
国破れて山河あり、です。友来る、一杯、一杯、また一杯、です。この関を越えて旅立つ君よ、いつかまた会おう、です。人生は旅であり、人の世は無常。月日は一代の過客にして、行き交う人も旅人なり…玄界灘を越えて、松尾芭蕉まで通底する抒情が流れています。
アイリッシュは西洋の中のアジア人かもしれません。

てのは、まあ牽強付会としても、彼らの繊細で豊かな感性と音楽的才能は、国境を越えてあらゆる国の人々にアタックして、ノックアウトする「力」を持っています。

 



2003/12/6

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