ーディオ その2
♪ 私はLINNのまわし者 ♪
     
渋谷のHMVは宝島!
 

金沢へ帰りつく前に、ソフトであるCDの話をちょっとしなければなりません。

私はこのところルネサンス以前のヨーロッパ古典音楽を聴いています、というより夢中になっています。
ところがクラシックというとバッハとかベートーヴェンとかモーツァルトとかシューベルトということになるので、それ以前のこういう音楽を手に入れようとするとけっこう手間がかかります。

以前から好きだったアーノンクールは、最近はレコード店に平積みになってたりして、おお、メジャーになったねと嬉し涙を流すんですが、彼もバッハやヘンデルなどのバロック音楽までしか演奏しないので、それ以前の名もない作曲家やルネサンス音楽や中世吟遊詩人の歌が聴きたい時はどうしたらいいんだろう、と本やインターネットでいろいろ探したんですが、そういうCDはほとんどヨーロッパの古学専門の小さいレーベルから出ていて、 輸入盤か、日本版が出てもすぐ廃盤になります。
レコード店のクラシックコーナーのすみっこに「グレゴリオ聖歌」とかが並んでいる「音楽史」という(ワケのわからない)棚があって、その棚に置かれているものがすべてです。
この「音楽史」という分類はいったい何なんでしょう。べつに勉強したくて音楽を聴いてるわけじゃないけどなあ。

金沢にはけっこう大きなレコード店がありますが、そこの「音楽史」の棚にも私が欲しいCDはほとんどありませんでした。
取り寄せますか?と聞かれた時、取り寄せるよりインターネット・レコード・ショップで注文した方が早いし、安いので、お断りしました。本と同じですね。
でもタイトルだけ知っててどういう内容か分からないレコードを注文するのは心配なので、せめて手にとってジャケットと会話をかわし、買うかどうか決めたい。と、これも本と同じ心境ですね。
東京のレコード店ならもっと「音楽史」コーナーが広いんじゃないかと期待して、東京のレコード店をいくつか回りました。

英国のレコード・ショップのHMVは、英国が古楽の伝統が豊かなせいか、古楽を「音楽史」ではなく「EARY MUSIC」という分類でかなり大量に扱っていて、インターネット・ショップでもここのデータベースが一番数多くヒットします。
店舗はどうだろうと渋谷のHMVに行ってみたら、クラシックコーナーの階の壁一面が「 EARY MUSIC」コーナーで埋まっていました。これはスゴイ。バッハなど有名作家のものが多かったけれど、輸入盤を中心にその辺の店では見かけないCDがズラッと並んでいて、いわゆるクラシック音楽以前の古楽ファンの方には、この店はかなりウレシイんじゃないかと思います。
あと、秋葉原の石丸電気CD館もけっこう豊富でした。
(インターネットでは、私はHMVと、あとAmazon.co.jp を使っています。)

そこで山ほどCDを買い込んで、宅急便で送り、嬉々として金沢に帰ってきました。

 

音の秘境「オーディオ・マン ディグ AudioMan Dig」
  金沢から帰っても私は毎日、

にじゅうごまんのCDプレイヤーなんて、だ〜れが買うか〜。

と、つぶやいておりました。
毎日つぶやくんだから、よっぽど欲しかったんでしょうね…。

東京から送った宅急便を開けて、このCDが床の上に山を作ったとき、私は決断の時が来たことを知りました。

  

ルネサンス以前の古楽というのは、ひとりで歌ったり、数人で合唱したりして、それを古楽器であるハープやリュートやヴィオール、フィドルなどの弦楽器で伴奏します。
そういう「古楽」の魅力は、音楽を演奏するというよりは、地味なメロディーと単純な構成の各パートが響き合って「世界」を作るところが面白いんじゃないか…と思います。

音楽というなら、近代音楽の方があでやかな旋律とバラエティに富んだ演出で人を楽しませるし、古楽器は近代楽器に比べるとパワーと技術と性能が圧倒的に劣るので、聴いてると音の伸びは悪いし、ボリュームも出ないし、つっかえてしょっちゅう弾き間違えるし(作りが素朴なせいか、奏法が難しいんじゃないかと思うんですが)、ヘタな古楽CDを聴くと、田舎のお祭りで時代遅れのシロウト楽団がナベカマたたいて大騒ぎしててうるさいなあ、とか、600年前の楽譜を復元してご苦労さまでした、勉強させていただいて感謝します、さよーならーとか(笑)、じっさいこういう古楽CDも何枚か買ってしまって、かなり悔しいんです(笑)。

一方よくできた古楽CDは、今の近代楽器には出せない曖昧で微妙な音を出す古楽器を使って、そのアーチストの想像力と精神性が数百年前の音楽と共振したとき、音楽にはこういう力もあったのか…と、私たちに新鮮な刺激と驚きと感動を与えてくれます。

でもそういう音楽を受け取るためには、和音をタバにしてハンマーにかえて振りおろす機械より(かなり根にもってます)、微妙で曖昧な音の響きを忠実に正確に再現する機械が必要なのです。

にじゅうごまんのCDプレイヤーなんて、だ〜れが買うか〜

しかし買ってきたCDをかけるためには、LINNのCDプレイヤーが必要なのです。
私にとって音楽が必要なものならば、私にはLINNのCDプレイヤーが必要なのです。
私は決断しました。音楽のために犠牲を払うことを。
欲望の前に身を屈した…ともいえますね(笑)。

  

さあて、どこで買うか〜と、インターネットでLINNのH.P.に行きました。

LINNはスコットランドに本拠を置く1972年に創業された高級オーディオメーカーです。
オーディオ自体が今は奢侈品で、大量生産ベースにはのらないので、作っている人たちが高級オーディオメーカーをめざしているかどうかは分かりませんが、100万円のレコードプレイヤーとか、480万のスピーカーとか、まったく、正気か〜といいたくなる正真正銘の高級オーディオも作っているので、人と音楽の幸せな関係を追求することに一寸の妥協も許さないメーカーであることは確かのようです。

そのホームページにはLINN製品を扱うお店のリストがのっていて、北陸では金沢だけに「オーディオ・マン ディグ」という店があることを知りました。
場所はどこだろうと電話をかけると、「「ラブロ」の裏の「ごいし奴」という飲み屋を知ってますか。その横を入ったところです。」
あ、木倉町!?
レストランや割烹が軒をつらねて、金沢では有名な飲屋街です。宴会のあとの二次会でよく行くところです(笑)。
こんなところにオーディオショップがあるなんて、と昼間の飲屋街を歩くと、「オーディオ・マン ディグ」の看板を見つけました。狭い間口を入ると、CDや中古レコードが棚にぎっしり詰まっているなかに、新品や中古のオーディオがズラッと並んでいます。スピーカーはB&W、Eclipse、アンプはMachintosh、この雰囲気は70年代のロック喫茶だあと顔でニヤニヤ、心でゲラゲラ笑ってしまいました。

そこにはLINNのCDプレイヤーGENKIと、CD・チューナー・アンプのCLASSIK-Kがありました。
LINNがお好きなんですか、と招き入れられて、特注の豆を使ったコーヒーをごちそうになって、いろんな機械でいろんなCDかけてくださって、「すし食いねえ、酒飲みねえ」状態でした(笑)。

秋葉原の「ダイナミック・オーディオ」でもそうだったんですが、LINNの話を始めると止まらなくなる人が多いようです。人間に優しいオーディオですよ、設計が根本的に違うんです、これが音楽ですよ。

コーヒーをごちそうになりながら、よもやま話をしてしまいました。
こういう製品が、なぜ日本のメーカーでは出ないんでしょうか。
日本のメーカーは優秀なんです。一寸一分の狂いもなく、きっちりデータを正確に合わせられるんです。データを信じすぎて、音楽を見失ってしまったんです。
嘆息。はい、それで市場も失ってしまい、作ることすら止めてしまったんですね。

日本人にとって音楽は、ずっと海外の音楽を再生装置を使って聴くことだったような気がします。
秋葉原駅で南米の楽団が演奏していたように、自分たちが歌って踊る「楽しいこと」をいつも路上にまき散らしていれば、本当に楽しいことを見失うことも無かったろうに…。
たとえばねぶた祭りの大太鼓の響きと、魂を呼びよせる横笛の哀切なコラボレーション。阿波踊りの多様なリズムが血管や脳中枢部に与えるダイナミズム。能楽や、長唄や、琴の音や、津軽三味線や、ジャズのドラムより自由奔放で迫力に満ちた御神乗太鼓(能登の伝統芸能ですが、ナマで聴くとスゴイ)。それらに普遍性を与え、クラシック音楽として発展させることが、なぜ私たちにはできなかったんだろう…。

そこにあったLINNの一番安いCDプレイヤーGENKIを、これ持って帰っていいですか?といって、月賦のチェックを切り(あいたた…)、ダンボールの箱に入ったCDプレイヤーGENKIを胸の前にしっかりとかき抱いた私を、オジサンは車で家まで送ってくれました。

その日から私はLINNのCDプレイヤー持ちになりました。
その日から、私の人生はちょっと幸せになりました(笑)。

 

欲望は空の果てまで
 

本当にいい音です。
KENWOODよりずっといい音で、長時間聴いていても苦痛になりません。
スピーカーのTANNOYは英国のメーカーだから仲間割れしそうだけど(笑)、今のところ英国&スコットランド連合軍で仲良くやっています。

しかしここにひとつ問題が生まれました。
アンプです。

オーディオ・マン ディグ AudioMan Dig で聴いたシステムは、アンプがLINNのCLASSIK−K、スピーカーがB&W(これは英国のメーカーで、けっこういい音を出すと思う)。

じつはSANSUIのアンプを使ってると言ったとき、日本のメーカーのアンプではLINNの機能を引き出せないから、同じ値段でアンプ、CDが一緒になってるCLASSIK−Kを買った方がいいといわれました。
そんなこといったって、SANSUIはまだ動くし、CLASSIK−KはLINNのラインナップのなかでは一番エコノミーな、アンプ・CD・チューナー一体型の機械で、一体型だけあってたしかにバランスはいいのですが、ちょっとパワーに欠けるという印象があって、GENKIの方がそれこそ元気よくCDを再現していたのです。
アーノンクール指揮、ヴァイオリンはギドン・クレーメルのモーツアルト「協奏交響曲」のCDを聴き比べた結果です。

しかしGENKIが元気な音を鳴らしたのはLINNのアンプ機能を使っていればこそだったらしくて、オーディオ・マン ディグ AudioMan Dig で聴いた時に比べると、ウチの「協奏交響曲」は音が不安定で、あのすみからすみまで力強く鳴らすパワーは、ウチのシステムでは響かないのです。

  

音の本質は振動だそうです。
その振動をレコードやCDで記録したものをプレイヤーからアンプに送り、アンプがその記号を解釈してスピーカーに送り、スピーカーがもう一度振動のかたちに変えて私たちの耳に返してくれるという伝言ゲームが、ステレオで音楽を聴く仕組みのようです。
アンプは振動を解釈して、スピーカーがどういう振動を再現するかを指図する、この伝言ゲームの大事な祭司なのです。

  

次はアンプですかあぁ(嘆息)。
LINNの一番安いアンプは、MAJIK(マジック)といいます。24万円。

それにしてもLINNのネーミングってヘンですね。GENKIだのIKEMI(アイケミですが、アケミってよく読み間違える)だの。ここはいつもCをKに置き換えるそうで、ケルト語にそういう語法があるのでしょうか(スピーカーにKELTIKというのがある、160万円)、でも社長さんに日本人のガールフレンドがいるのかもしれない(笑)。

SANSUIのアンプは部品生産終了につき修理不能のお墨付きをもらっている、今度壊れたら埋め立て場行き不燃ゴミ決定品なので、そのうちLINNのMAJIK購入のための積立預金を始めなければなりません。24万円は大金です。 SANSUIのアンプが壊れるのが早いか、MAJIKゲット積立預金がたまるのが早いか、デッドヒートになりそうです。

おまけに年代物のTANNOYのスピーカーも、そう長くは持たないような気がするんです。
これも長年使っているロートルで、とくに窓際に置いてある右側スピーカーは冬に湿気の総攻撃を受けるので、ときどきかすれて、そのたびに心臓が凍ります。しばらくたつと暖まるらしくて、直るんですが(直らないときはアッパーカット)、そのうち床に倒れ込んでエイト、ナイン、テン…(涙)。
安くて新しいTANNOY(スピーカーしか作らないここもまた、ン百万円の製品を出している「こだわり」のメーカー)もいいのですが、オーディオ・マン ディグ AudioMan Dig で聴かせてもらったB&Wは、低音の響きが力強くてけっこう好みだったな…あ、よだれ…。

  

後頭部をハンマーで殴られる心配がなくなってホッとしてますが、どうもこれから私は死ぬまでビンボーを運命づけられたような気がして、その辺ではちょっと、かなり落ちこんでいます。
オーディオマニアなんかになる気はなかったし、これからもなる気はないのですが。

でもLINNは一生ものだっていうし(修理部品何年あるかな?)、LINNのCDプレイヤーが来てから、私の生活は確かに楽しくなったようです。

LINNのCDプレイヤーで好きな音楽を聴いていると、いけ〜、そこだ〜!うわーお、やった〜っ!と叫んで騒いで(サッカーの応援じゃあるまいし、握りこぶしを振り上げてタテノリでクラシックを聴く私も私だと思う)、いつの間にか心が息をついて、体が楽になるのが分かります。

音楽って不思議ですね。
音の持つ振動がアルファ波を与えるとか、モーツアルトを聴かせると美味しいリンゴができるとか、日本酒を作る時に蔵に音楽を流すとか、木に流れている生体電波を振動に変えると音楽になるという話も聞きますっけ。
音の振動はどこかで宇宙の「気」に通じているのでしょうか。

リンゴ畑のスピーカーは、TANNOYかしら、それともBOSE? ちょっと知りたい…(笑)。

 

とにかく、みなさん、音楽を聴きましょう。そして楽しく歌って踊りましょう!

音楽がないと人は踊れません。
そして体が踊るとき、きっと心も一緒に踊るのです。

私たち人間が生きていくためには、音楽が必要です。

 


 

   情報コーナー  

♪私はLINNのまわし者♪ なので
LINNのお薦めシステムをここに紹介します

CLASSIK−K
( 25万円)
カラーは深緑やブルーなど五色あって、どれもシックです

 

LINNの製品のなかで一番手に入れやすい機械です。
アンプにCDプレイヤー(CD-Rも聴ける)とチューナーがついていて、これにヘッドフォンかスピーカーをつけると、ミニ・コンポができあがります。
でも25万円だから、小さいスピーカー買っても30万は超えちゃう。。。
安くないけど、音質は専門家が口を揃えて値段以上!といいます。
「LINNの音」というのがあるんですが、じっさい聴いていただくときっと分かると思うんですが、小さい体にいろんなものをギュギュウ詰め込んだ体で、それをしっかり出す「スグレモノ」です。
今ステレオを買おうと思っている方がいらしたら、ぜひ一度聴いてみてください!!!

 


さて、どこでLINNを買うかですが(笑)。
製品紹介のシンプルなH.P.ですが、扱っているお店リストがあるので、近くに扱ってるお店がないかを確かめることができます。
リストの中にはH.P.をやっているお店もいくつかあって(あの「亡国のジグラット」ダイナミック・オーディオもあるぞ)、買う気がなくてもそういうH.P.をのぞくと、音へのこだわりやテク解説やCD解説など、読んでるだけで面白くて刺激を受ける記事がたくさん載っています。LINNを扱っているお店は真剣にオーディオのことを考えてるところが多いんだなあと感動するか、「オタク〜」とあきれかえるか(笑)、どちらにしてもちょっと行ってみることをオススメします。ぜったい面白いですよ〜。

 


オーディオ・マン ディグ AudioMan Dig
金沢市片町2ー13−45
Tel:076ー263−2292

金沢でLINNが買えるお店。オーディオが好きなご夫婦が楽しそうにやっている「オーディオの秘境」(笑)。CDや中古レコードも豊富です。
片町ラブロの裏の居酒屋「ごいし奴」の横の道を入って、ちょっと歩いたところです。

 

私の最近のCDラックを覗いてみます?

 

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