一緒に夜の美術館へ行きませんか?

 

 


暮れかかる濃い紫の空の下を古代ローマ遺跡の側からゆるゆる坂道を登っていきましょう。
オレンジ色の明かりに照らされた丘の上の広場の両脇に
その美術館は建っています。

建物はバロックの宮殿です。

大理石の階段を上りましょう。

床は大理石のモザイク。壁は壁画で飾られ、天井は寄せ木細工の、とても豪華なパラッツォです。

ひとつひとつの部屋にたくさんの彫刻が並んでいます。

     

パラッツォで昔使われていた家具も陳列されています。


 

廊下に出ると、部屋に入りきらない古代彫刻がところせましと並べられています。

まるでがらくたのようです。

おや。古代ローマの彫像ばかり集めた部屋がありました。

ネロやアウグストウス、ハドリアヌスなど歴代のローマ皇帝や、
有名な政治家、哲学者の名前がプレートに書かれています。
ふうん。こんな顔をしてたのか。

名前の分からない人もいっぱいいます。
この部屋では二千年前の墓から蘇った大勢の古代ローマ人が毎晩饗宴を開いているようです。

紫から漆黒に移る空を背景に、窓の側にひっそりと胸像が立っています。
「若い男」とだけ書かれています。
ここにいる人たちはもうみんな亡くなっているのだけれど、
この人はきっと大人になる前に亡くなったに違いない。
若いのにもう何もかも見てしまったようなその視線の静かさと寂しさに、
ついっと胸を突かれます。

 

ひとけの無い廊下から廊下へ、部屋から部屋へ迷い歩いているうちに、
これが現実なのか、今が古代ローマなのか、ルネッサンスなのか、
自分がどこにいるのか、自分が誰なのかすら分からなくなります。


この扉を開けるとどこか違う世界へ続いているような、

そのまま時の狭間に迷い込んで、永遠にさまよい続けるような、

さまよい続けたいような・・

ワインを飲んでもいないのに酔ったようです。

そろそろホテルへ帰りましょう。

中庭の噴水の巨人に「さようなら」を言って。

 

Museo Capitolino e Palazzo dei Conservatori

ROMA

 

 

ローマのカピトリーノ美術館とコンセルヴァトーリ美術館は「瀕死のガリア人」「とげを抜く少年」「狼の乳を飲むロムルスとレムス」などで有名なローマの美術館です。
ここは午後いったん閉まって、夕方からまた開きます。(私が行った数年前はそうでした)
昼間見ない夢を、夜の美術館は見せてくれます。

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