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芳紀66歳
自動車学校てんやわんやのてんまつ記(9)


よりにもよって、しょっぱなの日にコンタクトを落っことすなんて、なんということだろう。私は泣きそうになりながら机の下を見た。無い! セーターに引っ掛かっていないかソロッと引っ張ってみる。運動靴のヒモのところに留まっていないか見る。無い、無い! すぐさま授業の終わるチャイムが鳴り、生徒らはサッサと出ていった。私が腰をかがめてウロウロしているものだがら、教官が、何をしているのかと聞いた。
「コンタクトを落としたんです」
そう言っているところへ、若い教官が入ってきた。その人は、「一緒に探してあげましょう」と言ってくれたのだが、無情にも、次のハンドル回しの生徒たちがゾロゾロ入ってくる。
「もういいです、もういいです」と私は言った。
「でも、困るでしょう」
「ホントにいいです、諦めます」と、私は教室を出た。
授業と授業の間は10分間の休みしかない上に、次の授業は2階に上がらねばならない。
2階に上がり教室に入り、しょんぼりと座った。思ったことは、「あしたにでも、コンタクト買いに行かんと、あかんなー」ということであった。「コンタクトって、今はいくらになってるやろ!」などと頭で計算をしながらぼうっとしていると、先ほどの若い教官が入ってきた。
つかつかと私の方に歩いてくる。自分の教本を差し出して、「はい、コンタクトがありましたよ」と言う。見ると、その教本の上に、コンタクトレンズが光ってチョコンと乗っかっていた。
「ええっ、あったのですか!」
「ドアの近くで見つけました。だいぶ転がっていったんですね」
「すみません、わざわざ持ってきて下さって……」
「いえ、次ぎ、ここ、僕の授業なんです」
と白い歯がこぼれた。(ハンサムボーイの先生、ありがとうございます)と、心の中で私は叫んだ。この瞬間、なんだか自動車学校の何もかもが、きっと、うまく進むような気持ちになった。その人は私にとって、まったく「神様、仏様」である。
「自動車教習所の先生は恐い人が多いよ」などとは良く聞く話しだが、それは全く違うということを、力説したい。

 

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