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芳紀66歳
自動車学校てんやわんやのてんまつ記(3)


私は、できるだけ自転車で行くようにしたのだけれど、夜になってしまった時、雨の時は、あれこれの人を思い浮かべては電話をして、いわゆる「アッシーくん」をお願いした。
ある日の、この詰まらない役割は、i先生だった。
i先生が若草色の車に乗って現れた。
「いやあ、綺麗な色!」
と私は言った。
「たしか前の車は違ったと思うんだけど、車、買い替えはったんですか?」
「そうです、前の車は××さんにあげました」
「ええっ! あげたんですか?」
「はい、廃車にするにもお金は掛かりますし、喜んで貰ってもらいました」
「へえぇ、えー!」
(そんなことなら、早く言っておくのだった)と私は思った。
それが頭に強く残っていたものだから、翌日の夕方の雨降り、またもや詰まらない役を引き受けてくれたYさんに、さっそくその話をした。
「ホントに早く言っておけば良かったわ」
と私は助手席でそう言った。
「車、この車で良かったらあげるわよ。明日、廃車に持っていくところだったの」
「ええっ! どうして?」
「鼻をぶつけちゃったの、他のところならいいけど、目立つところでしょ。だから」
この車は自分も気に入っている車なのだけど、とYさんは言った。
「車検は、来年の5月末まであるのよ」
と、Yさんは付け加えた。
あれよあれよと言う間に、決まった話だった。
翌日、さっそくYさんが、車を運転して私の家に現れた。そして、車を置いて帰っていった。
そういうわけで、私は、まんまと、シルバー色の素敵な車を手に入れてしまったのである。

 

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