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芳紀66歳
自動車学校てんやわんやのてんまつ記(11)


私が運転免許を取ると言うと、夫は大いに喜んだ。不思議なことである。
ずっと以前、私が環境問題も何も分からなかったころ、「免許を取ってみたい」と言ったことがある。そのとき、大反対したのではなかったか。「運動神経が鈍いのが取ると、みんなが迷惑する」と言ったのだ。
病院のベットに臥せっている夫に、どう切り出したものかと考えていただけに、あっさりと喜ばれて、私は複雑な気持ちになった。夫の気が、すっかり弱っているのが感じられた。
「退院するころには、免許が取れたらいいなって思ってるんよ」
と私は言った。
「早よ退院できるように、リハビリ、しっかりしてね」
持ってきた着替えをロッカーに入れて、代わりに夫の洗濯物をバックに詰めた。洗濯物でふくれたバックも持って、学校に通うのだ。
自動車学校のバックは、それでなくても重たい。教本2册に問題集もあった。熱いコーヒー入りの魔法瓶、おにぎり3個にゆで卵も持っている。
いや、ホント、ストレスというものが、これほどまでにお腹を空かさせるのだ。これだけ家で用意していても足らなくて、駅で菓子パンを買ったりした。これでは、みるみる体重が増えるのではないかと、頭では心配している。しかしストレスにはどうしても負けてしまって、ひっきりなしに口を動かしてしまう。
学校では、いつも殆ど小走りである。50分授業で10分休憩。しかし、その短い休憩時間のうちに予約を取ったりもするので、なんともせわしない。
技能ばかりでなく、学科のほうも相当に難しかった。何もかも今まで興味のなかった分野である。
学校に通うようになってから、私は、やたらと、信号や標識や表示が目につくようになった。今までは、道路に白い線でひし形が描いてあろうが線が引かれてあろうが、黄色く描かれたものがあろうが、何も見ていなかったことが分かった。人間とは、かくも、自分の興味外のことに無頓着であるかという新しい発見である。
とにかく、道路でも電柱でも柱でも、なんでも描かれているものがあると、教本を開いて確かめた。自動車などがどのように信号を曲っていくのか、じっと見つめていたりした。

 

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