前世紀前半、祖国日本に見放された一人の芸術家がフランスにいた。
この日記はその芸術家、藤田嗣治に魅せられた貧乏サラリーマンが
無謀にもコレクターに成らんとする苦難の記録である。
尚、本人は結構幸せらしいが、寄付は随時受付中である。


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2004.03.05
オークションの下見会なる物に行って来た。

ターゲットのいたずら書き風の自画像はシワシワ過ぎていまいちだった。
残念。いたずら書き風のも一枚欲しかったのだが。
挿画本『海龍』のコクトーと藤田の肉筆の額装はすごくゴージャスでちょっと欲しいと思った。

帰りに銀座の古本屋へ拝見したいと頼んでおいた挿画本を見に立ち寄った。
3万前後の価値と見た。10万は高すぎだ。
ありがとうございました。(勉強させていただきました。)と言って店を出た。

今日は金曜日なので土日は休みで行けなかった画廊に寄ってみた。画廊は土日休みのところが多い。
土日じゃないと休めない貧乏サラリーマンなんぞ相手にしていないという事だろう。

そこはちょうど片付け中で段ボールが置いてあったり、まるで営業日でないみたいな有様だった。
藤田を探しているというと奥から色々出して来てくれた。中に葉書を額装した物がいくつかあった。
ちょっと欲しかった。でも最低でも70万もする。

一つ良い事を教えてもらった。来週池袋東武で画廊がいくつか共同で即売会をするという。
行くじょ〜〜〜!!

夜、藤田のコレクションで有名なフランク・シャーマンの展覧会の図録を注文した。1600円なり。



2004.03.08
以前『夜と猫』を頼んだネットの画廊さんに挿画本の『静』と『マリア・ラニ』を注文した。



2004.03.11
フランク・シャーマンの展覧会の図録が届いた。

なになに、”フジタ以外の作品を、、、、、” へっ??

藤田以外の作品の展覧会だった。



2004.03.12
1月10日の木版の購入から2ヶ月、この間オークションで版画を一枚と挿画本を三冊購入した。
それぞれとても気に入っていたが、やっぱりすっきりとは満足出来なかった。
すべて直筆のサインがなかったのだ。
一枚目を購入する際、画廊の方が『 コレクションの一枚目としてはちょうど良いものですよ。』
とおっしゃっていたが、正にその通りになりつつあった。
ああ”、、、、この一枚が、、、、。

オークションやら画廊やらあちこち検索しまくった。毎週休みになると展覧会やオークションの
下見会に出かけた。過去のオークションに出品された物のチェックもした。
でも、欲しいと思っているようなものはほとんど見つからない。
よくこういうものはお金があるからって買えるっていうものじゃないって言うが、
それって本当なんだと実感した。その上、私たちにはお金もない。欲しい物で、
安くなくてはならないんだから、そりゃあもう、あるはずもない。

ところが木版を購入した画廊には欲しいー!!と思うものがいくつかあった。
特に最初の木版の少女を買った後追加された女の子は私たちには高すぎて一旦は諦めたものの
毎日HPを確認せずにはいられなかった。大抵は無表情と言われてる藤田の少女の中に有って
この女の子はうっすら微笑んでるようだった。
ずっと欲しいと思っているちょっとイタズラな少女達とは全く違う雰囲気だが、
なんだか微妙な表情が気になって気になって。

この女の子の前後に追加された少女が数日で無くなってしまたったときには正直、
いやかなり動揺した。しかもHPを見ていると類繁に削除追加がある。あ”〜 無くなっ
ちゃったらどうしよう〜〜。でも欲しいと思い続けたのとは全く違う顔をしている。
今ここでこれを買ったら思い続けたやつが見つかっても買えなくなる。どうしよう。
実はこの子を初めてHPで見てからずっとそれだけが気になっていた。

この子は理想の恋人と実際のダーリンみたいなものかもしれない。見た目の面白さで
欲しかった子達とは違う。ちょっと寂しそうに見えたり、ちょっと大人だったり、
優しく微笑んでくれたりするこの子はダーリンだ。この子との生活はきっと幸せに違いない。
そうだ、この子と出会ったのは運命に違いない。運命ならばお金は無くとも、とりあえず
買わなくてはいけない。この子は二枚とない。無くなっちゃったらどうするんだ。
お金は後からついてくる。←???

そうして訳の分からない考察の果て、初めの少女の木版を購入してからわずか2ヶ月半で
今までの人生で最大のお買い物をすることになってしまったのだった。



3月13日(土)
池袋東武の藤田の展示即売会へ行って来た。
欲しい葉書がいくつかあったが画廊で見た時より20万くらい高くなっていた。百貨店の取り分が
上乗せになっているそうだ。他の作品も全体的にとても高い。木版の少女を買った画廊は百貨店の
上乗せ分を差し引いても結構安いみたいだった。それになんといっても物が良い。

帰りに気になっている少女が無いかなあと突然ぶらっと例の木版を購入した画廊に寄ってみた。
残念ながら少女は貸し出し中で留守だった。戻ったら連絡くれるというので軽い気持ちでお願いした。
”戻ったら休みの日にでも来てみよう。”

そうなのだ、画廊にはいつでも絵があるわけではない。そこにあるのは一部で後は倉庫だったり、
どこかに貸し出していたりということがあるそうだ。



2004.03.14
挿画本の『Les Montparnos』と『Foujita』を探して欲しいといつものネットの画廊さんにお願い
した。

『Les Montparnos』は比較的市場によく出るので出たら連絡を下さるという。『Foujita』はオリ
ジナルの版画付きのものが少し高いがあったので、それで良ければ聞いてみるがという事なので、
少々高くてもオリジナル版画付きの方が良いのでお願いした。まだ有ると良いんだけど。



3月15日(月)
夜、画廊から電話が入った。
貸し出し中の少女が戻ったのではなく、わざわざ私たちの為に戻したと言うのだ。
もう一枚の気になる少女も一緒だ。
あ”ー走り出したら止まらない。

戻ったら連絡をくれるんではなく、戻したということに、ちょっと憤慨しているかに見えたEMHが
紙を待ち針で壁に留めている。( お前は 。。。)



2004.03.14
注文していた挿画本『静』と『マリア・ラニ』が届いた。
『静』は挿画は大変繊細で美しいが一枚だけであり値段相応かなと思った。
『マリア・ラニ』は同じ女性を複数の画家が描いたものだ。面白い。
一枚ずつ貼ってあって、切らずに額装が出来る。こちらはかなり買得だったと思った。
これの原物の展覧会があったら、さぞ面白いだろうなあと思う。



 挿画本『 静 』
 1929年
 ヤマタキク著
 デッサンのリプロダクション1点
 総部数1000部
藤田による著者 ヤマタキクさん
静は静御前の静




このピラピラに絵が軽く貼ってあったようだ。
最初全部バラしてあるのかと思ったが、本の
大きさから判断すると、もともとバラバラだ
ったように思われる。貼ると書いたが、もし
かしたら単に挟んであったのかもしれない。
こういう装丁に詳しい方はぜひ情報をお寄せ
ください。
                     ↓
挿画本『 マリア・ラニ 』
1929年
コロタイプ51点
総部数 605部
藤田、コクトー、ブラック、シャガ
ール、マティス、キリコ、キスリング
、マン?レイ?、、、など、
現在でも知らない人は居ないような
錚々たる芸術家が51人も、一人の女
性を描いている。
今では到底出来ない企画だと思う。
スゴい時代だったんだなあと。。。
マリア・ラニさん
この女性を51人もの芸術家が描いている。
コクトーのマリア・ラニさん 藤田のマリア・ラニさん


3月17日(水)
会社を休んで実物を見に行った。
気になっている少女はインターネットで見ているだけで、まだ実物を見ていない。
この短い間の経験から行くと画面で良かったものが実物はあまり良くなかったり、
画面ではNGのものが実物は良かったりする。気になる少女はどうだろう?
もう一人の少女はすでに実物を見ていて、これはとても気に入っている。
もし実物を見て気になっている少女がダメだったらすでに実物を見ている少女を
購入するつもりだった。この時点ですでにどちらかを購入する気持ちは固まっていた。

気になる少女は思った通りさりげなく、人によってはこれでXXもするの?と言われそうである。
もう一方の少女はもう少し華やかで彼の作品では人気の猫を抱いた少女である。
しかもなぜか安い!
それに対し気になる少女の持っているのはなぜかタマネギである。

慣れない画廊探訪で、しかも自分に取っては大変高額な買い物をしようとしているのに
私ときたら実はとても冷静だった。
多分、この子が家にくるのは運命に違いない。成るべくして成ったことで。。。。

一目で私の気持ちはたまねぎ娘に決定していた。
私たちは結局、人気の猫を抱く少女ではなくたまねぎ娘を選んだ。

お金は私がタマネギ分、EMHがそれ以外を出すことにした。
”ふん、タマネギの無いあの子なんて、豆腐の無いナメコのお味噌汁みたいなものよ”

シティーバンクで高額ですが何にお使いですか?次からは予約してください。と言われた。
”そうか、そうなのか。いつでもお金があるわけじゃあないんだ。”
私たちはこんなことも知らなかった。銀行強盗はよくよく調べなくては割にあわない仕事らしい。
良かった。しなくて。

さて、お気づきかもしれないが私というやつは興奮すると何も解らなくなってしまうやつである。
1、免許を忘れた。
2、お金を下ろすのに身分を証明するものが必要だというのをすっかり忘れていた。
たまたま今は保険証がカードになっているので、なんとか助かった。
”あっ!免許忘れた!”
”それでは、下ろせませんので。”
と、エレベーターの前で門番みたいに立ちはだかっていた女性にきっぱり言われた。
シッシッと言わんばかりのところ、
”ああっ、ちょっと待って、なにかあるかも知れないので、、、”とバックを掻き回して思い出した。
”あっ! 保険証があります。”(ふん! 絶対下ろしてやる!!こうなったら全部下ろしてやる。)
なんとか、東京三菱もクリアーした。

ところが最後に一番大きな問題が控えていたのだった。
とうに満期を過ぎていると思っていた小額の定期が何枚か、実は満期がまだだった。
結構利率の高いものである。
結局必要ギリギリの枚数だけ解約し、後は別の銀行から少しずつ下ろした。
”これじゃあ、支払う時バラバラだ。恥ずかしすぎる。”

思った以上に銀行で時間がかかり、お昼もなかなか出てこなかったのも相まって、
約束の時間に大幅に遅れてしまった。ごめんなさい。
担当さんはお出かけ中だった。きっと食事に行っていたのかもしれない。
すぐに戻っていらしたけど、もしかしたら食べずに戻っていらしたのか? ごめんなさい。

早速バラ銭を出して数えてもらった。ちなみに消費税はサービスしていただいた。わ〜〜い!
と、素人の私たちはこの金額で喜んで良いのか大馬鹿者なのか、全く解らなかった。
”消費税はいただかないということでどうでしょう?”と言われ、
”正直、こういうものを実際購入する場合の金額は解らなくて、、、”と頭をかいてしまった。
我ながら、かわいすぎる。
多分、全くのド素人なのは解っているので、それなりに値引きしてくれているに違いない。
そのまま画廊の提示した金額で購入した。

小さいものなので持ち帰ることにして包装してもらっている間、紅茶をいただいて待っていると
担当さんがこの本はお持ちですか?という。最近出た2万なんぼの本と2〜3千円の本だ。
全くの新品である。
持っていますと言うと図録を何種類か持ってきて、お持ちでない物があったらどうぞと言う。
一冊持っていなかったので戴いた。これは昔発行された物で新品ではないが、その分、
好きな者にとってはとても貴重なものだ。その後、もう一冊これも2万もするお高い本を
持ってきて良かったらお持ちくださいと言うので、ありがたく戴いてしまった。
家に帰って見てみると、しばらく楽しめそうな豪華な内容だ。嬉しすぎる。しかもほとんど
新品である。
その上、ぬわんとデメルのお菓子をおみやに戴いた。デメルを食べるのはかれこれ10年ぶり
くらいだ。うれしい。。。。



鑑定書付きの絵を手にすることがあるなんて夢にも思わなかった。
絵に興味の無い人、この画家に興味の無い人にとっては単なる紙くずであるが、
私にとってはそれはもう歓喜の踊りを披露してしまうくらいうれしい。
今日はもう2回もしてしまった。といっても手を上げてくるくる回るだけだ。ああ、なんてバカ。
ついでにちょうどTVに映っているヒデキと一緒にYMCAもやってしまった。
これでもう本当にどうしても一生車はる〜ちゃんになってしまった。
しかし3年で5万キロ。一体どうしたら一生乗れるのだろう?

兎も角もこうしてタマネギ娘は我が家にやってきた。
今はG5の上でちょこんとしている。
すっからかんになってしまったのはちょっと寂しいけど、見ているとへらへらしてくる。
かなりのおばかである。

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EMHへ
ごめんね。私なんかに捕まったばっかりに、
この5年間が無に帰してしまった。。。。。

しかたがない。また1から出直しましょう。
そうして、5年後に又一枚買いましょう。

買えなかったお嬢さん、5年間そこで売れずに待ってるのよ〜。必ず迎えにいくからね〜。



2004.03.18
先だって一冊だけカタログを購入したオークションへ一年間だけ会員登録をした。
これで、この間買ったカタログを一年分とそれよりお高い作品のカタログ一年分が送られてくる。
お高い方は一生何も買う事はないだろうけど、見ているだけで楽しそうなので思い切って入会した。



2004.03.19
銀座の郵便局から手紙が届いた。
この間解約した定期だが、私が書いてはならないところまで書いてしまったそうで、
そこに訂正印として通帳の印鑑の押印が必要なので印鑑を持って来てくださいとの事だった。
慣れない事はしてはいけないという事なのだろう。窓口で自分のお金を下ろしたのは人生二度目の
事だったのだ。

書留で送る事も考えたが、結局郵便局には行かなくてはならないので来週銀座へ行く事にした。



2004.03.20
雨でジトジト、湿度がうっわー!! 90%ってなんじゃそりゃあー!!
マズイ!かわいいたまねぎちゃんの顔に茶色いボツボツが出来ちゃったらどうしよ〜。
どうしよ〜
どうしよ〜。
どうしよ〜

温度計を持ってウロウロしていたら、あっという間に
60%に下がった。

何の事はない。置いていたのがいけなかったのだった。
とはいえ、ぶら下げるところもないし、ガーゼのところ
にカビ(ぎゃー!!) も生えるし、なんといっても読む
のが面倒だし、新しい温度&湿度計が欲しいなあ〜。
それに梅雨時までには湿度を管理するマシンも欲しい。
でも除湿&加湿が一台で自動のやつは検索する限り一台
しか見当たらない。知らないメーカーだし、買って大丈
夫か?

ちなみに一般的になんだが、湿度を測るところと本体とが
分離してないと本当の湿度って解んないんじゃないかなあと心配でもある。
家によって条件はまちまちで?データーからでも推測しにくいのでは。
さてメーカーさん、どうなんでしょ?



2004.03.23
オリジナル版画付きの挿画本を頼んでおいたギャラリーからメールがあった。
残念ながら頼んでおいた挿画本はランスの美術館にすでに売られた後で、オリジナル付きは
著名なコレクターのところに全て収められていて今後市場に出る事はまずないだろうとの事だった。
オリジナル付きでないのだったら入荷出来るとの事だった。
あ”〜 遅かった。オリジナル版画付きは60部しかないのだ。60部では無理だろうなあ。
でもオリジナル版画付きが有ると聞いてはやはりオリジナル版画付きが欲しくなるのが人情だ。
とりあえずオリジナル版画付きでないのはお断りした。

やはり欲しい物が見つかったら即刻買わないといけないのかもしれない。



2004.03.23
お高いオークションのカタログが届いた。
何が何でも欲しいと思うものはなかった。良かった。。。。


2004.03.24
一人だったので銀座の郵便局は観光用のアクアライン経由のJRバス『菜の花号』で行く事にした。
往復で3200円。安い。

郵便局ではお金を下ろしたのにサランラップと
キッチンクリーナーとミニペン5色セットを
頂いた。でも3200円にはほど遠い。
その後お使いで銀行振込をした。
振込は挿画本の保存箱 20000円なり。高くないか?

帰りにタマネギちゃんの為に湿度計を買った。

銀座から戻ってしばらくすると、先程入金した
保存箱の所から納期がなんと5月になってしまう
との連絡があった。
おいおい、さっき払っちゃたんだけど。第一それまでどうすれば良いんだ?



2004.03.26
待ちに待ったお安いオークションの出品作品が公開された。欲しかった物が3つほど出ている
挿画本1冊と挿画本の挿画が2つ。
早速1年間20000円の会員登録をした。これで入札出来るようになるはずだ。
オークションの会社から審査の上返事をするとメールが来た。何を審査するのだろう?
カードの事? いや、この人はのめり込み易く結局払えず自己破産の可能性が濃厚なので
オークションには向いていない、入れない方がいいとか?

ヤフーに『猫の本』のクリステミスが出品されている。欲しい。
でも例によって入札者制限がある。また、H君に頼んでもらおうか?



2004.03.27
悩んだ末、大変申し訳ないが、EMHに友人のH君に入札を頼んでもらった。
これで絶対大丈夫だと思う。



2004.03.30
欲しいと思っていた『猫と女とモンパルナス』がヤフーオークションに出た。
古本屋では15000円くらいで売っているものだ。それを1000円から始めている。
欲しい。。。。
でもこれにも入札者制限があった。入札経験無しの新人はきっと入札出来ない。
何でも良いからお安いものを買って経験を付けるか。



2004.03.31
『クリステミス』の入札には間に合わないが、『猫と女とモンパルナス』など今後の事も有る
のでお安い雑誌を買ってみた。戦前の雑誌で『婦人之友』というやつだ。表紙が藤田の絵だった。
後で知ったのだが、日本初の女性雑誌だそうだ。藤田の表紙のものが他にも何冊かオークション
に出ている。一体何冊有るのだろう。ちょっと欲しい気もする。


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