MARCH18のDIARY 『モノを言う権利』

 

  今日の朝のブッシュ大統領の演説を聞いての感想。
 アメリカ歴代でおそらく最も頭の悪い大統領なのだろうが、国民をうまくコントロールするようなしゃべり方だけはウマイなと思った。この演説でアメリカ国民のどれだけの人が納得したのかはわからないが、見事に自分の論理を正当化している。悪いのはすべてフセインで、それをこれだけ辛抱してやったのだから、すべての責任はフセインにあるし、私たちはイラク国民の味方。アメリカはすべてを寛容に受け入れる慈悲深い国なのだというハリウッド映画にありがちな感動スピーチに仕上がっている。これを聞いて、「うん、なるほど、アメリカはこんなに情けをかけてあげてるのに、何でイラクはわからないんだろう。バカな国だ」ぐらいに思うアメリカ人は多いかもしれない。
 私は、およそ二十年前にアメリカの大学を大学院で勉強していた人間。少なからずアメリカという国には恩恵を感じているし影響も受けている。でも、何かがアメリカの中で変わってきているように感じている。その私の危惧は本当なのだろうか確かめようと、私はブッシュの演説のすぐ後にアメリカの友人にメールを出した。彼(白人)は、私がミシガンの大学院で助手をしていた時の同僚。彼は、現在西カロライナ大学のフルート科の教授をしている。
 すぐに彼から返事が来た。彼いわく、「大学周辺の環境で戦争支持の人間は一人もいない。むしろ、みんなブッシュに怒りを持っているし、彼が正規に選ばれた大統領だとはこれっぽっちも思っていない。アメリカ政府はブッシュにハイジャックされたのだ。過去50年間でアメリカが築いてきた諸外国との友好関係を彼はいっぺんにぶち壊そうとしている。しかし、おそらくいったん戦争が始まってしまったら、国民の多くは戦争に同情を持たざるをえないだろう。でも、それは戦争そのものを支持するのではなく、戦場に行っている多くの兵士たちの無事を祈らなければならないからだ。私は、この結果、私たちの子供や孫の代の人間が憎しみや怒りに今後ずっと悩まされ続けなければならないことを一番心配している。これは、とっても恐ろしいことだ。そして、もし北朝鮮にオイルがあったなら、ブッシュは間違いなく北朝鮮とも戦争をしていたに違いない」。
 そうか。やはり、未だにあの大統領選挙そのものの正当性を疑っている人は多くいるのだ。フロリダの開票の結果で百八十度変わっていたかもしれないあの選挙結果に多くの人は未だに疑問を持っているのだ。日本で毎日聞くイラク関係のニュースではアメリカの大多数の人間が戦争支持という風に思えてしまうが、多くの日本人と同じようにアメリカの姿勢に疑問を持っているアメリカ人もけっして少数派ではないのだ。
 ただ、翻って一番問題なのは、日本政府の対応なのかもしれない。この戦争の結果、最後に一番びんぼうクジを引くのは日本という国だということがわかっているのだろうか。フランスやロシアや中国などの安全保障常任理事国は早々と戦争反対を表明している。それは、単純に考えれば戦後のアリバイ作りでもある。「あの時、ちゃんと反対したじゃないか」。そういうアリバイ作りをしているに過ぎない。日本はここでアメリカの尻尾にくっついて戦争支持などいう姿勢を打ち出した結果どれだけの犠牲を支払わなければならないのかわかっているのだろうか。現実に、すでにフランスにいる在留日本人に対する差別が始まっているというし、多くのアラブの国々との今後の関係でどれだけの問題が出てくるのか計り知れない。そして、膨大な戦費を使い切ったアメリカから「お金を出せ」と言われるに決まっている日本。そんな国がこれから世界に何かを発言する権利があるのかな?私は単純にそう思うけれども。

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