AUGUST9のDIARY 『プロとアマの違い』

 
やっと、今回のキッチン・ライブの最終メニューが決まった。いろいろと紆余曲折のあった末のメニューなので、ようやくひと安心というところ。料理に関してはまったくのアマチュアの私が、仮にもお客さんから料金をいただいて食事を作るのだから、事この仕事に関しては、プロ並みに気を配って準備をしている。
 考えてみれば、小さい頃から料理好きだった私がなぜ料理で生計をたてずに音楽の道に進んだのかも不思議な気がする。よく人前では、料理が一番好きだからそれは趣味にとっておいて、2番目に好きだった音楽を仕事にしているというようなことを言うが、それは真っ赤なウソだ。というよりは、それは単なる建て前で言っているに過ぎない。本音を言えば、やはり音楽が好き。そして、一番愛している。ただ、それだけでプロになるという決心はつかなかったのも確かだった。学生時代、音楽を職業とするかどうか迷っている時に私の背中の押したのは、ある人のこんなひと言だった。
 「本気で音楽が好きだったら、プロになるしかない。どんな分野でも、プロにしか見えない部分が絶対にあるはず。それを見ないで、ただ趣味として音楽をやっていても、音楽の核心に迫ることはできないし、音楽の本当の楽しさも何もわからないまま終わってしまうのではないか...」。
 これを聞いて、確かにそうだなと思った。プロとアマの違いは、単に金をとれるかどうかではない。プロとして、自分を崖っぷちに置いてそこから絶対に逃れられないような状況に自分を追い詰めない限り、どんな物事も本質は見えてこない。そして、その本質を知ることができるのがプロであり、それを見ずに表面のオイシイ部分だけをかじってわかった気になってしまうのがアマチュアなのではないだろうか?そう思った瞬間、私は音楽のプロになろうと思った。音楽の本当の楽しさは、プロにならなければわからないのならば、プロになってやろうじゃないか。そんな闘志が沸いてきたからだ。
 ひるがえって、これまでプロとしてやってきた中でわかったこともたくさんある。わからないこともまだまだたくさんある。でも、これだけは言える。プロになって本当によかった、と。やはり、アマチュアではわかりえないことがゴマンとある。それを垣間見れたことだけでも幸せだし、まだまだ音楽の核心に迫れてないと思えるだけ、これからがまだ楽しみでもある。これから、一体どれだけの音楽の楽しさを味わうことができるのだろうか?そんな期待感でいつも満たされているからだ。
 料理のプロになることは若い時に断念した。でも、料理についてわかりたいことはたくさんある。音楽と料理に本当にたくさんの共通点がることもわかった。それは、物事の本質が根っこの部分ではそう変らないんだということの証しでもあるだろう。でも、それ以上に私が知りたいのは、音楽や料理の人間にとっての本当の意味だ。何のために、音楽なんてものは存在するんだろう?料理だって、ただ、素材をそのまま食べていれば人間は餓死しないはずなのに、なぜ調理することを覚え、飾り立てることを覚えたのだろう?
 こんな素朴な疑問は、やればやるほど深まってくる。本当に音楽って何だろうな?っていつも思う。なくても死ぬわけじゃないけど、ないと生きていられない....。
 今回のキッチン・ライブ、告知とほぼ同時に予約が満杯になってしまったけれども、何とかもっと多くの人に食べてもらう機会を作りたいなとも思う。夏向けのメニュー満載の今回のコース・メニューは、私自身が客になりたいなと思うメニューだ。そう言えば、音楽も料理もこれが私にとっての原点かもしれない。私が尤も気持ちよく感じられる音楽、私が尤もおいしく感じる料理。でも、けっして自己満足ではないもの。そういうものを作ってみたいと思っている自分の感覚。私は、それをひたすら信じてきただけなのかもしれない。  

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