JUNE28のDIARY 『創造する喜び』

 
 8月の終わりに2回目のキッチン・ライブがあるので、そのメニューと試作品を持って打ち合わせに行く。前回のヴァレンタイン・デーの時と違い、もうすでに時は夏。夏にふさわしい、スパイスとハーブを使った料理が今回のメイン・コンセプトだ。基本的にはコース・メニューなので、オードブルを4品、サラダ、そして、メインが2品を試作品として持っていく。実際のメニューやレシピは、当日のお楽しみということにして、今回は、お店のシェフが新しくなり、その人がかなり実績のある人なので、自分が持っていったメニューとサンプルがどう評価されるか、かなり緊張した。本職の音楽で、デモ・テープをクライアントや代理店の人に聴いてもらう時のような、とってもナーバスな瞬間でもあった。
 実際に食べてもらったのは、シェフとマネージャーだけなのだが、一つ一つの料理を舌にのせて何かことばが出てくるまでの時間がとても長く感じられる。結果、いろいろ誉めてももらい、また貴重なアドバイスももらった。しかし、私としてかなり嬉しかったことは、シェフが、「みつとみさんの味は、とっても優しいネ」と言ってくれたことだ。だからこそ、「どれか一品、もっと強烈な味に変えてもいいかもネ」とも言われた。確かにそうなのかもしれないなと思う。自分が作る音楽にも演奏にも、共通して言われることだ。やっている楽器がフルートという「優しい音色」の楽器だからではないだろう。私には、アグレッシブな、格闘技のようなインパクトを持った音楽も作れないし、そういった演奏もできない。それと同じように、自分が作る料理も、そういう自分の内面が現れてくるのかもしれないなと思う。所詮、人間は、自分の内にないものは表現することはできないということだろう。
 メニューの中の一品。夏のコースらしく、カレーを用意した。私のカレーは、食べたことのある人にはすこぶる評判がいい。しかし、いくら友人の間で評判がよくても、そういうお店でお金をとって出す料理として通用するものだろうかという心配もあった。だから、シェフやマネージャーの評価が気になったのだが、「今日持ってこられた試作品の中でも絶品ですね」という彼らのことばを聞いてほっと胸をなでおろす。
 自分の舌がおいしいと思うものを作って出し、それを食べた人も「おいしい」と言ってくれる。これが、料理を作る人間にとっては一番嬉しいことだ。音楽でも同じこと。自分が一番楽しめる音楽を作り、そして演奏する。それを、他人が聴いても同じように楽しんでくれる。これ以上の喜びはない。料理も音楽も、一番大切なことは、楽しむことと創造性。
 自分がまず楽しめること、喜びを感じること。そして、他人にはできない自分の個性を新たに創造していくこと。これができるのが、音楽であり料理だと私は思っている。料理本に書いてあるレシピ通りに料理を作っても、それはそれだけのこと。そこに、自分らしさが出ることこそが一番の楽しみであり本当の嬉しさ。既成の曲を当たり前に演奏して、たとえそれが上手な演奏であっても、それだけで終わるならば、何もそれは私でなくてもいいはず。そこに、他の人に真似のできない「私」という個性があって、はじめて自分の存在価値があるような気がする。
 前回のキッチン・ライブの後も、すべてのレシピをHP上で明かしたけれど、今回も、ライブ後には、同じようにレシピを公開するつもりだ。でも、カレーの中身を少しだけそっと教えておこう(でも、きっと意外に思うはず)。肉は使わない(これまで、鶏のもも肉を使っていたのだが、どうもこれが邪魔なような気がして、今回思い切ってハズしてしまった)。目に見える素材は、タマネギ、かぼちゃ、ナス。これだけ。しかし、カレー・ソースにはいろんなものが入る。生クリーム、ココア、赤ワイン、ホール・トマト、コリアンダー、ガランマサラ、リンゴ、ヨーグルト、そして、カレー粉、などなど。
 「ココアの粉?」。そう思う人もいるかもしれない。でも、これにはいろんな理由がある。それは、実際食べてみないことには納得できないかもしれない。おそらく、味覚の鋭い人なら、この素材を見ただけで大体の味が想像つくかもしれない。そう。ひと口食べた瞬間、かなり甘味のあるマイルドなカレーだと思うはず。でも、じわっと辛味はきいてくる。いわゆるコクとうまみのある大人のカレーなのかもしれない(なぜそうなるかは、レシピを見てみないとわからないとは思いますが)。興味のある人はぜひ、次回のキッチン・ライブに足を運んでください。

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