JUNE18のDIARY 『ひのき舞台』

 
  韓国のサポーターとサッカー・チームは、本当に私たちの心を熱くしてくれるが、今回のこのベスト8進出を一体どれぐらいの人たちが予測したのだろうか?もちろん、開催国は、それだけ有利に試合が展開されるのだから、ある程度まではと誰しもが予測するだろうが、韓国と日本のこの熱気と快進撃を本当にどれだけの人たちが考えたのかとふと思ってしまう。ましてや、それを賭けの対象にしていた人たちだったら、なおさらその事が重大な関心事だったのではないだろうか?
 私は、ギャンブルが嫌いなので、競輪も競馬もやったことがないし、パチンコも行かない。そんな人間だから、アメリカに住んでいた時もチャンスはありながらも、ラスベガスという場所には一度も行ったことがない。ロス・アンゼルスに住んでいた時、近くのグランド・キャニオンまでは足を伸ばしたが、ラスベガスにはこれまで一回も縁がないのは、きっと私のギャンブル嫌いがそうさせているのかもしれない。
 同じネバダ州の中にもう一つギャンブルの街がある。ラスベガスよりもかなり北にあるリノという街で、ラスベガスほど有名ではないが、ここもれっきとした公営賭博の街。町中がギャンブル一色の街だ。ただし、こちらは冬はスキー客でごったがえす山の上のリゾート地で、一種コロラドに似てないこともない。砂漠のど真ん中にあるラスベガスとはちょっと趣きを異にする。このリノには行ったことがある。もちろん、ギャンブルをするためではなく、ちょうどそこに住んでいた友人を訪ねるためだった。この街は悪くないな、と思った。ただ、やはり何となくラスベガスとは違うなという気がしたのも確かだった。ラスベガスに行ったこともないのだから、違うなという比較も妙な話しなのだが、ラスベガスにあってリノにはない何かがあるような気してならなかったからだ。そして、その何かの正体はすぐにわかった。
 ある時、私は、マンハッタン・トランスファーという男女4人のジャズ・コーラス・グループがラスベガスのあるホテルでやったショーのビデオを見た。そして、私は、ビデオに映っていた彼らのライブ・ショーを見て思いっきりぶっとんでしまった。彼らの音楽的な素晴らしさやハーモニーの美しさなどは、それまでにも十分わかっていたつもりだったが、そのビデオを見て、「ラスベガスという場所でライブをやるには、ここまで一流のエンタイテーナーでなければいけないんだ。だからこそ、この場所でショーができる人が一流と言われているんだ」、私はそう納得することができた。彼らのショーは、それぐらい素晴らしいショーだった。
 そうだ。ラスベガスにあってリノにないもの、それは、この一流というステイタスなのだと思う。ラスベガスという場所のステイタス。ニューヨークともシカゴとも違う、この場所独特のステイタス。それをこの街は持っている。映画のハリウッド。芝居のブロードウェイ。カントリー音楽のナッシュビル。ヒップホップのニューヨーク。檜舞台ということばがあるが、それこそ、サッカー選手の檜舞台がワールド・カップであるように、あらゆるエンタイテイナーにとっての檜舞台が、このラスベガスという場所なのかもしれないなとも思う。そういう意味で、ギャンブル嫌いな私も、一度は、いつか訪れてみたい場所ではある。

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