FEBRUARY 3のDIARY 『人生は楽しい、カナ?』

 
  親しい友人の声優さんに、暇ができると映画館に駆け込む人がいる。熱心な映画好きというのはよくわかるが、ちょっとの空き時間で映画館に入るのは勇気がいる。でも、最近、私も彼の性癖を見習うようにしている。渋谷、新宿、銀座を歩いていれば必ず映画館にぶつかる。買い物やミーティングの合間に時間ができた時、映画館の上映スケジュールをすぐ見る癖がついたような気がする。 例えば、今3時ちょっと過ぎだとする。次ぎの予定まで2時間空いていれば映画は一本みれる。次ぎの上映開始時間が3時15分。ラッキー!とばかりにチケットを購入する。つい四、五日前、『アメリ』を観た。期待以上に面白い映画だった。客の大半は若い女の子。 でも、たまに中年も混じる。どちらかというと内向的で彼氏もなかなかできないアメリが結局はラストでけっこうハンサムな彼氏を作ってしまうまでの映画なので、ラストのオチだけを見ると普通のラブストーリーに思えてしまうのだが、この映画、普通の恋愛映画にはない何かがある。何よりテンポ感がイイ。 これまでのやたら理屈っぽいフランス映画からするととても異色に思えるほど、映画そのものの持っているリズムが小気味いい(フランスも、こんな映画作れるんじゃん!?)。それにキャラの設定も面白い(駅のパスポートなどの証明写真を撮る機械の下に落ちているいらない写真ばかりを集める変態男、ちょっと自閉症気味の若い店員をイジメる八百屋のオヤジ、とかけっこう面白いキャラがたくさん出てくる)。
 カフェのウェイトレスをするアメリの唯一の趣味は「水切り」。川に小石を投げて何段飛びができるかと競うアレだ。私はけっこうこれが得意だが、この遊び、考えてみればけっこう内向的な遊びかもしれない。別に誰かと競わなくても、この遊びは自分一人で完結する。今日は何段飛んだ。明日は何段飛べるかナ?これだけでも十分楽しい。別に、自分がそうやって遊んだつもりはないが、この映画の主人公のアメリは、確かにいつも「一人で」水切りをやっていた。 しかも、かなり楽しそうに。
 この映画には、けっこう内向的な人物ばかりが登場する。彼女の働くカフェ。たばこ売り場の女店員は、常にどこかが痛いと訴える万年ヒステリー女の典型のような人物。いつも誰かに文句を言ってないと気がすまない人。自分から「幸せ」をドブに捨てているような人でもある。その彼女に思いを寄せるのが、店の常連で、毎日同じ席に座りながら客や店員の行動を逐一テープレコーダーに吹き込んでいる偏執狂男。この二人の恋のキューピッド役をアメリが演じる。そして、それを本当に楽しそうに演じる。 かなり自虐的な性格のアメリは恋を目的には生きない女性だ。
 しかし、ある日、自分のアパートに数十年前にそこに住んでいた人間の忘れ物を発見する。そして、彼女は、その忘れ物の主を発見してそれを持ち主に返すことを人生の目的にする。つまり、この女性は、本当は人生をただ生きているだけの女性ではないということになる。人生の目的なんて、偉くなることでも、恋人を見つけることでも、お金をためることでもなく、ほんの些細なことでもそれを見つけさえすれば、人生は楽しく生きていかれるんだということを実践するような女性のように見える。 事実、この人は常に一人で行動する。誰かとつるんでいる姿はまったく見せない。でも、それでいて「孤独な女性」にはこれっぽっちも見えない。この映画が人気のある秘密はおそらくこの部分なのではないかと思う(そして、最後には結局ハンサムな男性とハッピーエンドになるところも)。
「人生は楽しい」。どんな些細なことでも、自分が楽しめることさえ見つけられさえすれば。

ダイアリー.・トップへ戻る