MAY 10のDIARY  『香魚(アユ) 』

 

 知り合いと釣り談義をした。と言っても向こうは川釣りしかやらないと言うし、私は、海釣りの方が好きだ。それじゃあ、意見が噛み合わない、と思いきや、アユ釣りの話しになると俄然二人とも話しに熱が入ってくる。私は、正直言ってアユ釣りは、これまで数回しかやったことがない。しかも、かなり昔だ。それでも、あの釣りの面白さと難しさぐらいは多少わかっているつもりだ。
 アユ釣りが特殊なのは、アユが苔しか食べないからだ。つまり、海苔しか食べない魚。こんな特殊な食べ物の趣味を持った魚も珍しい。だから、アユは香魚(こうぎょ)と呼ばれるぐらい香りのいい魚だ。生臭さはない。私は、西瓜の匂いや芝生の匂いに近いと思っているが、とにかくいい香りのする魚であることは間違いない。ブラックバスのようなどぶ臭い魚とは正反対だ。だから、この魚、餌で釣るわけにはいかない。苔を釣り針につけるわけにはいかないからだ。しかも、アユが苔を食べる食べ方は、岩に突いた苔を歯でこすり取るようにして食べる。となると、マスを釣る時のフライフィッシングのような優雅な釣りはできない。
 アユの釣り方は、どう考えても3種類ぐらいしかない。一番一般的なのが、友釣り。
 おとりのアユを糸の先に針と一緒につけて、アユどうしで喧嘩させてその針の先に引っ掛けて釣る。これは、ペテンだ。騙しというか、FBIがやるようなおとり捜査とまったく同じぐらい狡猾で卑劣な釣り方だ。要するに、縄張り意識の強いアユに、自分の縄張りにわざと餌のアユを泳がせてこのおとりのアユで引っ掛ける。いや、まさにおとり捜査だな。そして、地元の人たちがよくやるのは(どこを地元と言うのか曖昧だが、要するに、アユのいる川の地元の人たち)、転がしという釣り方で、糸にたくさんの針つけて川の中を「転がし」て、そこにアユを引っ掛けるというこれまたかなり乱暴な釣り方。最後は、投網(トアミ)で釣る(?、これは釣りではないかもしれない)。
 小さい頃、叔父が投網が好きでよく多摩川に釣れていってくれた。たまたまある時、叔父が投げた網の中にアユが数匹入っていたことがあった。叔父は、あわててハヤやオイカワなどの魚に混じっていたアユだけ逃がした(多摩川でアユが釣れていたのだ!)。まだ、アユが解禁になっていなかったのだろう。アユの解禁日は大体全国どこでも6月1日だ(多少、前後する所もあるようだが)。「旬のアユ」というコピーがスーパーの魚売り場にあった。まだアユは解禁になっていないのに!(養殖のアユだということを自らバラしているようなものだ)。

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