FEBRUARY 5のDIARY  『小説「香水」の面白さ』

 

 ある雑誌に頼まれて書評を書くことになっている。今月末が締きりなので、まだ時間はあるが、そのためにある本をもう一度読み返してみた。ドイツの小説で『香水』というのがそれだ。
 タイトル通り、香りに関係がある話しだ。1738年のフランス、パリに生まれた私生児の誕生から物語りが始まる。つまり、この小説の主人公だ。この私生児は、特異な体質と特異な才能を持っている。まずもって体臭がまったく存在しない。これは、やはり人間としてはどうみてもおかしい。だから、この私生児を引き取った神父が「この赤ん坊は悪魔の子だ」と叫ぶ。
 無理もないと思う。赤ん坊には、赤ん坊独特の体臭がある。もちろん、大人の体臭と違って乳臭いその体臭は、それほどいやな匂いではない。でも、その男の子にはまったく体臭がない。でも、彼は体臭がない代わりに他の匂いに対する感覚は人一倍。いや人一倍どころか、人十倍ぐらいの超能力を持っている。何しろ、壁越しに隣の人間の体臭をかぎわけられるのだから。この赤ん坊は、成長してその才能を生かして、パリの調香師に弟子入りして、そのおちぶれた調香師をパリ一の香水屋にしてしまう。まあ、ここまではいい。この後が問題だ。この主人公は、次第に「究極の香り」を求め始める。ここら辺から話しが急に猟奇的になってくる。
 彼が最終的に探し当てた「究極の香り」とは?
 これが、女性が、少女から大人の女性に変る瞬間、ほんのつかの間に発する匂いこそ「究極の香り」という結論に達する。じゃ、どうやってこの瞬間の匂いを集めるんだ?ということになる。
 香水というのは、花の香りにしても、木の香りにしても、動物の香りにしても、空気中に散らばっている分子状のものだから、だんだんと空気に拡散して消えてなくなってしまう。だから、それをアルコールと混ぜて液体状にして瓶の中に封じ込めておく必要がある。この気体を液体に変化させる過程でもともとの香りを発生する物質を熱で蒸発させる必要があるのだ。この熱と言った時点で、もうすでに人間の身体との関係がかなり猟奇的に結びついてくる。生きている人間からは香りがとれない。となれば、当然おぞましい事件が発生してくることになる。
 そう。連続猟奇殺人事件が起るのである。この小説の後半は、こうした犯罪の話しになってくる。前半は、香水の話しとか、匂いの超能力とかの話しで、わりと美しいのだが、後半はかなりおぞましい。でも、この話し、メチャクチャ面白い。ちょうど十年ぐらい前に出版された本だが、隠れたベストセラー(つまり、ロングセラーか?)として今でもかなり売れている本だ。香りに関心があろうがなかろうが、読んでみて損はない本だと思う。

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