JANUARY 6のDIARY『ビヨークの「ダンサー・イン・ザ・ダーク」』

 

 昨年の年末にやった仕事に、東芝EMIから来月出る予定のクラッシックの名曲コンピレーション・アルバムの解説というものがあった。別に、CDのライナーの仕事はこれまでも何回もやった事があるのでさして目新しいことはないのだが、この仕事だけはちょっと別物という感じがした。というのも、このCD、5枚同時に出るのだが、「バッハ」「モーツァルト」「ベートーベン」「チャイコフスキー」「ワーグナー」という5人のメジャー作曲家がそれぞれ1枚のCDに30曲ずつおさまっているという超ヘビーな内容になっているからだ。
 1枚のCDに30曲ということは、合計5人分で150曲。これだけの曲の作品解説を1週間で書かなければならなかったわけだ。しかも、それプラスそれぞれの作曲家の年表と「こぼれ話し」みたいなものまで書かされたのだからたまらない。これは、期日までに終わるのかいなと思っていたが、とりあえず年内のやり終えてひと安心という感じで無事正月に突入できた。これでギャラをいくらくれるんかいなと思いつつ、一つ映画を見た。ビヨークの「ダンサー・イン・ザ・ダーク」。
 渋谷の劇場は超満員で立ち見も覚悟、といった状況だったが幸い座って見ることができた。以前からビヨークには興味もあり大ファンということもあったのだが、これはもう完全に脱帽、というぐらいビヨークに圧倒された。映画のストーリーは、かなり現実ばなれしたところもあり、本当にこのストーリーでいいのかなというぐらい主人公(ビヨーク)の状況が悲惨だ。カルトの名作に「マッチ売りの少女」という悲惨な話しがあるが、それ以上の悲惨さでここまで悲惨なストーリーにする必要があるのかと思いたくなるが、ビヨークの演技と歌を聞いていれば、とりあえずそんな事はどうでもよくなってくる。カンヌで主演女優賞をとったのももっともだと思う。脇の演技人たちも相当ウマイ人たちばかり集まっているのだが、ビヨークの演技はそれ以上だ。いや、それ以上に見えてくるのだ。初の主演映画で、もうこれ以上映画に出るつもりはないらしいが、歌にも演技にもいい意味でクセのある彼女のことだから、よほど脚本を選ばない限り映画に出る気はないというのもうなずける。
 ベット・ミドラーやシェールなど、本来が歌手でありながら俳優としても一流の人は少なからずいるが、ビヨークの場合はそれとはまた違ったスタンスで演技をしているような気がする。表現者としての自分をあの映画にぶつけた。そんな気がしてならない。とにかく、彼女の表現に圧倒され、映画のストーリーの悲惨さとは裏腹になぜか幸福感に満たされた映画だった。

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