ロングテノンはなぜ必要だったのか?(Original Les Paulのセットネック方法)2009/10/17記載

 Gibson社のエレキギターは殆どがセットネック、ボディとネックが接着されています。初のソリッドギターであるLes Paul ('52年)ではネックの中子が指板の最後端より長くフロントピックアップキャビティの中ほどまで達しています。
ロングテノンあるいはディープジョイントとも呼ばれているこの方式は、接着面積が広く採られるためボディとネックの接合は強固な構造となり、豊かなサスティーンが得られ、これがOriginal Les Paulがその後の再発売ものとは明らかに違うVintage Soundを生みだし・・・

 と、Les Paul Model、特にSunburstの【音の秘密】として語られる事が多いロングテノンですが、フロントピックアップを外せば見た目で分かるOriginalと現行品の差異ですので、近年のReissue、Histric ModelにもOriginalの再現として採用されています。
ロングテノンの効用については賛否両論ありますが、これが採用された理由については、熟練していない工員でも失敗のリスクを軽減させるため、というような事が語られているようです。その理由は前段の【音の秘密】の否定です。また、Reissue、Histric Collectionは同じロングテノンでもOriginalとは製造工程が違うので、Originalとはやはり音が違う・・・など。

 ここで現在と違うといわれる50年代の製造工程というのは、ネックをボディと接着してからネックの指板面と平行にボディトップを平面に成形し、ボディ、ネックに同時に指板を接着する、つまりネックをボディに接着した後から指板を接着するという方法です。たしかにこの方法が採られていたとすれば、接着は強固なものになるでしょうが、ボディとネックを接着した後に指板に合わせたネックサイド面のリシェイプ(再加工)が必要になります。再加工が必要ないほどにネックの指板接着面・周囲を成形すれば、今度は指板接着の最に(当然ピン、治具等は使用したでしょうが)数mmの誤差も許されない事になります。

 ここで同時期(と言っても数年後ですが)に製作された他の種類のGibson社のギターを考えてみましょう。それはLes Paul Junior(Wカッタウェイ)です。Les Paul Jrではピックガード下に隠されていますが、テノン部分にネックをボディに接着した時に出来たと思われる治具(クランプ)の跡があります。それを見るとボディとネックの接着には、複数の小さなクランプではなく大きなクランプがそこに1個使われたと思われます。Original Les Paul ModelもJrと同じ工場で、同じ工員に、ほぼ同じ工程で製造されていたと考える事が出来ます。そうするとLes Paul Modelでもテノン部分、ボディに架かる指板部分の2箇所にクランプを掛け接着したと思われます。テノン部分のクランプ跡はその後のフロントピックアップキャビティの削除加工により消える事になります。この方法ですと、クランプの1本が指板ではなく直接ネックのマホガニーとボディとを接着する事になりますので、指板をネックに接着した後にボディに取り付けても、どこかのHPに書いてあったような、ボディには指板だけが接着され、ネック本体のボディへの接着は緩いものになるという状況を回避する事ができます。当然ネック接着後に指板をボディに接着するという効率の悪い工程を採る必要もありませんし、不良品の発生するリスクも少なくする事ができます。

つまりロングテノンの存在理由はネックを接着する時のクランプを掛ける部分という訳です。

これもあくまでCavalynの想像ですが、現在のReissue、Histric Collectionが同等の工程で製作されていることを望みます。
もうCavalynも何本か購入していますので(^ ^)v